数百人のイスラム教徒が、幾重にも円陣を組んでトランス状態で祈りを捧げる(ムスリム式ヘドバン?)冒頭のシーン。
実はストーリーと関係ないミスリード(FBIが突っ込む描写がカットバックされ、あたかもこの集会を強襲しようとしているかのように思わせるが実は違う)なのですが、インパクトは絶大。
正に“掴みはOK”という奴です。
「ターゲット・イン・NY」
(2010年/マフスン・クルムズギュル監督)
この邦題考えた版元(オデッサ・エンターテイメント…ってすげー社名だな。ウクライナ人?…と思ったらタキ・コーポレーションの譲渡先か)の担当者一歩前に出ろ。
原題は「FIVE MINARETS IN NEWYORK」。MINARETS(ミナレット)というのは、イスラム教の宗教施設に付随する塔。
1日に5度行われる礼拝の呼びかけ(アザーン)の場となるほか、要人の死を知らせるためにも使われていたそうで、日本語では「光塔」「尖塔」と訳す…らしい。
イスラムの用語にニューヨークを合わせる事で異文化交流を匂わせているのに、“ターゲット”で括っちゃったらただのC級アクションにしか見えないじゃないか。
まあ、ムスリム前面に出したら一般客は引いちゃうかもしれませんが…。
テロの首謀者であり資金援助者でもあるイスラム教指導者、コードネーム:ダジャル。
ダジャルがニューヨークに潜伏しているという情報をつかんだトルコ警察は、インターポールとFBIに協力を依頼して身柄確保に成功。
ダジャルことハジュの引き渡しを受けるため、トルコ警察のフラットとアジャールがニューヨークへ(プロットだけ見ると「ブラックレイン」を思わせますね)。
ハジュはアメリカで商店を営み犯罪歴は無し。善き父、善き夫。その温厚な人柄はとてもテロリストとは思えず…それでもアジャールにはハジュをダジャルとしてトルコに連れ戻さねばならない理由がありました。
ヒューマンドラマで引っ張るのはキツイと判断したのか、要所要所に無駄なアクションシーンが入るのはご愛嬌。
冒頭のムスリム式ヘドバンに呼応しているように感じたのが、トルコ警察学校の卒業式。
ひとつの思想で束ねられた大人数のモブシーン。円と直線という形の違いはありますが、その視線の向かう先は指導者一点。こちらもストーリーには直接関係がないのですが、こういう「絵」を挟むセンスは結構好き。
集客用ゲストでダニー・グローバーとロバート・パトリック(T-1000!)が。
ダニー・グローバーはハジュの友人(何だこの可愛いおじいちゃん)、ロバート・パトリックはFBIの現場指揮官(歳喰ってデブったのに威圧感5割増)。
劇場未公開は勿体無いなぁ。