デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

Vシネなら満点。 孤狼の血 LEVEL2

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『なんが表見の自由じゃ!? そがいなもん守って犠牲者出ても、新聞は責任とりゃせんじゃろが!? こっちは必死に治安守っとるんじゃ。おのれら外野は黙って見とりゃええんじゃ!』

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極道は生かさぬように殺さぬように。視界に収めて管理する。その均衡こそが平和。

清濁併せ喰らう悪徳刑事・大上(役所広司)が死んで3年。

その志を引き継いだのは(大上調査の密命で)県警から派遣されたキャリアエリート、日岡松坂桃李)。

3年の歳月は日岡を立派な悪徳刑事に育て上げておりました。

暴対法施行直前。平成3年、広島県呉原市。

「孤狼の LEVEL2」(2021年/白石和彌監督)

抗争激化の尾谷組と五十子(いらこ)会。日岡は尾谷を焚きつけ五十子の会長を殺らせた裏で手打ちを画策。

五十子会はビジネスに主眼を置く「企業」に変身。結果、抗争の芽は摘まれ、平穏な日常が戻ってきたかに見えましたが…。

ここで、死んだ先代会長の右腕と言われていた上林(鈴木亮平)が出所。

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こいつがとんでもない厄ネタ。石川力男が裸足で逃げ出す悪魔と死神のハーフ。

『二度と戻らぬよう、娑婆で精進しますけ』

と深々と頭を下げたその足で刑務官の妹の目玉抉って犯して殺して憂さ晴らし。

平和ボケした二代目(寺島進)も血祭。

『おのれは血も涙もないんか!? 命だけでも堪忍したれと言うとるだけじゃない!』

『命乞いしかできん極道に生きとる資格があるんか!?』

奥さん共々抉って括って燃やして埋めて。尾谷組壊滅の怪気炎。

孤狼の血」の続編ではありますが、原作を離れたオリジナル脚本。

原作2作目「凶犬の眼」は、山一抗争を背景とした実録路線なのですが、どうもいきなり駐在所に飛ばされている日岡の設定が弱い(悪徳刑事に「成長」した日岡を描きたい!)と思ったのか、大鉈振るう路線変更。

で、役所の抜けた穴を線の細い松坂ひとりで埋めさせるのは無理があると思ったのか、振り切りまくった悪役を投入。

結果、前作にあった、組織間抗争の間で揺れる大上と日岡の「正義とは何か」というテーマが彼岸の彼方。

バットマン対ジョーカーのような(派手ではあるがツッコミどころ満載の)アメコミ風エンタメに(まぁ狙ってやっているのでしょうが。にしても不死身かよ、松坂)。

まあ一応、この機に乗じて(警察関係者の表沙汰にできない情報を大上の遺産として受け継いだ)日岡を潰してしまおうと言う上層部の暗躍なんてものもあるにはあるのですが…。

『何が情報だよ? 007にでもなったつもりかテメェ? 広島の治安守ってんのはテメェだけじゃねぇんだよ、タコ!』

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140分飽きずに観る事はできましたが、全体的に軽い仕上がり(Vシネなら満点)。役所広司の存在って大きかったんですねえ。

かたせ梨乃、宮崎美子という「最近どうしてるんだろ?」二大女優のご尊顔を拝めたのは眼福でした。

反面、元乃木坂46西野七瀬はVシネ感満開の安さ。弟の棺前にしてあの演技はないだろ。ただ、ちゃんと逆さ屏風になっている葬儀シーンって割と珍しいかも。

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★前作のおさらいはこちらから。

 

 

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