
『お爺ちゃんたちは一生懸命働いたんだぞ!お前たちのためにな!お前たちはなにをしてくれたんだ!?』
本日7月20日は「月面着陸の日」。
1969年(昭和44年)の今日、7月16日に打ち上げられたアメリカ有人宇宙飛行船「アポロ11号」が月面に着陸し、人類が初めて月面に降り立ちました。
月を舞台にした作品は硬質からトンデモまで多々ありますが、今回はその世界観の大きさにおいて他の追随を許さない「世界初OVA」を。
「ダロス」(1983年/押井守監督)
21世紀末。人口増加や資源枯渇などの諸問題を解決するために計画された月面開拓。
犠牲に犠牲を重ねて月の裏側に築き上げられた都市モノポリス。
潤沢な鉱物資源は地球を甦らせ、人類に永続的繁栄を約束しましたが、月面開拓民(ルナリアン)に対する扱いは日に日に冷淡なものに。
月で生まれ地球の記憶を持たない2世たちは地球連邦政府の度を越した管理体制(頭部の認識リングによって行動の全てを監視され、地球への旅行も禁止、死体は化学処理され墓標を立てて弔う事すら許されない)に対する反発を強め、反政府ゲリラに。
ゲリラ弾圧のため、仕組まれた偽装テロ「バーソロミュー事件」が更なる禍根を生み、ゲリラのリーダー、ドグ・マッコイは統轄局軍司令官アレックス・ライガーの恋人で、地球連邦政府要人の令嬢メリンダ・ハーストがモノポリスを訪問した際に彼女を誘拐、人質に。
『俺たちはとうとうやった。サイは投げられたんだ。もう後戻りはできないぜ。バーソロミューでの屈辱を晴らし、俺たちの自由を勝ち取るんだ!リメンバー・バーソロミュー!』

バーソロミュー事件の首謀者として逮捕(勿論冤罪)され、終身刑の名目で土星に送られたタツヤ・ノノムラの弟シュン・ノノムラはこの騒乱に巻き込まれて心ならずもゲリラと行動を共にすることに。
過酷な開拓と劣悪な労働条件、そして差別と弾圧に苦しむルナリアンの心の支え、それがダロス。
『もう60年になるか…初めてダロスを見た時のことは今でも忘れられん。地球に背を向け、深いクレーターの底から暗黒の宇宙をじっと見あげているあの顔を見た時、その場に膝をついたのはわしだけではなかった。地球を空に仰ぐこともできない星と岩だけのこの世界でただひとつ、人間の証を見た思いがしてな』
初期開拓に関わった科学者たちが作ったと思われる巨大な遺跡ダロス。
統括局はゲリラの心を折るためダロス破壊指令を。
一度は破壊されたダロスですが、自己修復。さらに自己防衛機能が立ち上がって近づくもの全てをレーザー攻撃(ゲリラも統括局も一瞬で総崩れ。まさに鎧袖一触)。

その攻撃範囲は広がり続けやがてモノポリスに。
重い腰を上げたのは事なかれ主義の総領事。
『総領事の権限において緊急事態を宣言、全作戦行動を中止!展開中の部隊は別名あるまでその場で待機せよ!モノポリス内のあらゆる活動を停止させろ!』
(動くな…誰も動くんじゃない。息を潜め地に伏して待つんだ。小賢しく動き回ってあいつを怒らせるな)

何を知っている総領事!?
クレジットは脚本・鳥海永行、押井守。監督・押井守となっていますが、実態は鳥海&押井のW監督体制。これがマズかった。

人間ドラマにしたい鳥海(「エリア88」)と、状況描写に重きを置きたい押井(「パトレイバー2」)。スタートもゴールも異なる二人は、絵コンテから演出、色指定に至るまで対立し、双方で勝手に書き換えるなど現場は大混乱だったそうです(スタッフの心労いかばかりか。合掌)。

地球という星を知らぬ月面開拓民の2世が、月と地球の抗争に巻き込まれ飲み込まれ、狼狽し、認識し、自覚し、ひとりの戦士(ゲリラ/テロリスト)として覚醒していく、その過程は工藤栄一監督の「大殺陣」そのままに思えます。
新田一郎氏が(難波弘之氏と共作)で書き上げ、自身が所属する「ホーン・スペクトラム」が演奏したテーマソングが熱いです。
★月を舞台にした作品もひとつふたつみっつ。
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