デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

人の人生を弄ぶのだ! 究極の愉快犯登場。 ドクトル・マブゼ

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『愛? そんなものは存在しない。あるのは欲求だけだ! 力への意思だけだ! 人の人生を弄ぶのだ!』

究極の愉快犯登場です。

ドクトル・マブゼ(1921~22年/フリッツ・ラング監督)

精神科医にして賭博師、偽札を作り相場を動かし、催眠術で人を思う様に操る神出鬼没の大悪党、それがドクトル・マブゼです。

ドイツ/スイス間の経済協定書を盗み出し、株価操作をするというスケールのデカさに驚きましたが、2幕目移行は小粒なエピソードが続きます。

動機が、人妻を篭絡せんがために夫を破滅させるというような「あまりに人間的な」ものだったり、クライマックスが西部警察ばりの篭城銃撃戦という「頭脳戦」とかけ離れた展開だったりするのがちと残念。

ただ、マブゼのキャラが立ちまくっているので、なんとも魅力的な犯罪活劇になってはいます。

※「力への意思」という言葉からも分かる通り、マブゼにはニーチェの超人思想がみてとれます。邪悪なツァラトゥストラといった所でしょうか。

第1部「大賭博師・時代の肖像」全6幕155分。
第2部「地獄・現代人のゲーム」全6幕115分。
合計4時間30分!


さすがにモノクロ・サイレントで4時間半はちょっとキツいですが、逆に言えば「ちょっとキツい」程度で4時間半を乗り切れるという事です。これは凄いことですよ。

マブゼのキャラは絶対、黒沢清の「CURE」に影響を与えていると思います。

※参考:「CURE」→2008年8月27日