デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

フェリーニ原理主義者だけ。 オーケストラ・リハーサル

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『僕も楽器をやっていたから分かるけど』とか、『あれはこれのメタファーで』とか、『監督の意図した暗喩と隠喩は』とか言い垂れて悦に入っている人にとっては珠玉の名作なんだと思います。

「オーケストラ・リハーサル」

(1978年/フェデリコ・フェリーニ監督)

 

礼拝堂という外界と隔絶された小宇宙でオーケストラがリハーサルをする、内容はこれだけ(尺も72分と短め)。

このリハーサル風景をテレビ局が取材している、という設定なので擬似ドキュメンタリーにもなっています。

カメラの前で自分の楽器の魅力と優位性を語る団員たち。

やがて指揮者が登場、リハが始まりますが、容赦ない駄目出しに団員が反発。

『リハは2回まで。3回は組合の規約違反だから別料金』

指揮者なら普通これくらいの駄目出しはするだろう、という程度の物言いなのですが、この子供の駄々が一気にエスカレート。

礼拝所(元は王族の墓地)という神聖な場所にアジテーションを書き殴って「指揮者不要」を訴え、指揮台を蹴り飛ばし、巨大なメトロノームを代わりに持ち出し(どこにあったんだ、そんなもの!)・・・・。

十戒」でヘブライ人がシナイ山の麓で偶像崇拝の享楽パーティーをやっている時のような喧騒を神の雷ならぬ鉄球が一喝、崩れかけた礼拝堂でリハが粛々と再開される。

言いたいことは分からなくもないですが、元々大して頭が良さそうにも演奏が巧そうにも見えない連中が、権利だけを主張した挙句、常軌を逸しているとしか思えない暴挙に出るという展開がもう駄目(不愉快極まりない)。

大体、建物が崩落しかかっているのに、「俺たちに出来るのは演奏だけ」みたいなノリでリハ再開って・・・まず避難だろ、普通。

いっそ、鉄球(取り壊し工事に使う奴ね)が四方八方から飛んできて、指揮者も団員も組合代表も全員死亡、巨大メトロノームが墓標になった、というオチにしてくれたら大絶賛だったのですが。

リハの最中に団員が次々と上着を脱ぎ始める(中にはシャツも脱いで上半身裸になってしまう者も)シーンも『ほら、頭のいい人はこれが何を意味するか分かるよね』的演出でイラっとします。

知性溢るるフェリーニ原理主義の方だけお楽しみください。