“ダーウィンは間違っていた”
DARWIN WAS WRONG
1914年。南極圏。絶海の孤島。そこはまるで流刑地。
自ら進んで地の果てに降り立った名もなき男。島にあるのは手入れの滞った小屋と灯台。そこにいるのは自分と変わり者の灯台守の二人だけ…のはずでした。
「コールド・スキン」
(2017年/ザヴィエ・ジャン監督)
何かから逃げるように風向きと風速を記録するだけの気象観測員として孤島にやってきた男。彼を運んできた蒸気船の船長がいかにも“船長”って顔で、こういうキャスティングをする映画はそれだけで信用できます。
着いた島の景観が、荒涼なんて言葉では言い表せないあの世とこの世の分水嶺。
何故か灯台はハリネズミのようなトゲトゲを纏ってさながら要塞。
自分と交代で任を解かれるはずの前任者の姿はなく。灯台守の男グルナー(レイ・スティーヴンソン)はただ一言『チフスで…』。
小屋には前任者の日誌が。絵心があったようで島の生き物や魚のスケッチも。その中に見たこともない異形のデッサン。添えられた言葉は『ダーウィンは間違っていた』。
夜。物音。暗い海からわらわらと溢れてくる人影。ヒト?いやあれは…。
インスマウスの住民か、ノンマルトの使者か。
その数の多さに『これって「ザ・ホード 死霊の大群」じゃん』と思ったら、この監督さん「ザ・ホード」の製作総指揮やってたんですね。どうりで。
グルナーと二人、灯台に籠って毎夜海からの襲撃者に銃弾浴びせる日々。
それは「地球最後の男」(とその後継者たる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「要塞警察」)に連なる鉄板の籠城フォーマット。
グルナーが灯台で“飼って”いる向こう側の女。言葉は通じないが舌技抜群という辺り、オチの雰囲気も含めて「愛しのジェニファー」を思わせます。
話が腹に落ちないと駄目という方には不向きですが、クトゥルフ系が好きな方は買いだと思います。