デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

要塞警察(つづき)

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さて、本題。
監督本人が公言していますが、この映画の下敷きとなったのはハワード・ホークスの「リオ・ブラボー」に代表される西部劇、そしてジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」に代表される低予算映画です。

治安劣悪なロス郊外アンダーソン地区。
無差別殺人を楽しむストリート・ギャングが少女を射殺。


今なら絶対撮れないシーンです。
子どもを、しかも少女を、更に言えばディズニー映画出演経験のある少女を、正面から着弾ばっちり血糊べったりで射殺!

居合わせた父親が執念でギャングの一人を射殺しますが、見渡せば仲間のギャングがう~ようよ。

びっくらこいて近所の警察署に駆け込みましたが、そこは移転準備の為、警官二人と事務の女性二人がまったり留守番してるだけ。

ギャングは警察署を包囲し、電話・電気を遮断してサイレンサーで一斉射撃。

武器は僅か。居合わせた不運な黒人警部補ビショップは、偶然一時収監されていた凶悪犯罪者ナポレオンらと共闘して篭城戦を展開します。

虚飾を殺ぎ落としたソリッドなストーリーです。10万ドルというATG並みの低予算をとことん逆手にとってます。

事務員の女性リーを演じているローリー・ジマーがグロリアばりのかっちょよさ。右手を撃たれても左手一本でリボルバーに弾を込め、銃口を向ける囚人に「もう一発喰らってるの。2発は御免だわ」とクールな啖呵をかまします。

「煙草をくれないか」というナポレオンに左手で紙マッチを擦るシーンは幻想的とも言える美しさ。


警官と囚人、男と女の間で勇気あるものだけが敬意を獲得していきます。

英語と字幕と吹き替えの微妙なズレ(字幕だと9分署、吹き替えだと14分署、建物には僅かに14DIVISIONの文字が、でもタイトルは13管区だべ。あと、木箱に入ったモノが字幕だと爆薬になってるけど、札の文字はEVIDENCEだから単なる証拠品、吹き替えだとアセチレンで微妙に意味が違う)がちと気になりますが、発売されただけで豪儀です。

因みに、この映画のモトネタ「リオ・ブラボー」を作るきっかけになった「真昼の決闘」を木星まですっ飛ばしたのがピーター・ハイアムズの「アウトランド」、で、「要塞警察」をカーペンター自身が火星まですっ飛ばしたのが「ゴースト・オブ・マーズ」です。