デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

索漠とした正義の後味。 破壊!

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『あんたは何でも欲しがるが、俺たちは違う。俺たちが欲しいのはあんただけだ』

風紀課刑事で思い出すのは「シャーキーズ・マシーン」ですが、あっちには刑事としての矜持に対する報いがありました。

本作の二人には報いがありません。

刑事たらんとする行動と犠牲が手に入れたのは索漠とした正義の後味。

これぞ(これも?)アメリカン・ニューシネマ。

「破壊!」(1974年/ピーター・ハイアムズ監督)

風紀課のはみだし刑事、キニーリー(エリオット・グールド)とファレル(ロバート・ブレイク)は、警察上層部とも癒着している麻薬組織の黒幕リゾー(アラン・ガーフィールド)を“独自の”捜査で追い詰めて行きますが・・。

地面スレスレを流れるように這い、追い、引くカメラワークが秀逸。

特に深夜(にしては客がわんさかいる)のスーパーマーケット内での銃撃戦を捉えた縦横無尽な撮影は本作の白眉。

ふたりの捜査はかなり破茶滅茶で、令状(←一応請求はしている)無しは当たり前、聞き込みは恐喝まがい、街中で銃撃、丸腰(少なくとも手に銃は持っていない)の犯人を後から射殺(ポパイもやったけどね)・・。

黒幕の車燃やしちゃうって・・(普通、この時点でクビだろ)。

それでも、この作品が印象深いのは、砂を噛むようなヒロイズム否定のエンディング故でしょう。

公園に出没する変態を捕らえる為に、公衆便所にベタ張りしながらも、良い刑事たらんとした男の心が折れた瞬間。アメリカン・ニューシネマの残照がここにあります。

DVDには、伊武雅刀と尾藤イサオによる吹き替えを収録。丁々発止のやりとりはとても字幕で追えるものではないので、実に“いい感じ”の仕上がりでした。