お話を追いかけるだけなら、恐らく30分程度で終わってしまうでしょう。
では残り92分は贅肉なのか?
いえいえ、そここそが“映画”です。
「シャーキーズ・マシーン」(1982年/バート・レイノルズ監督)
街中で派手なドンパチやらかして麻薬課から風紀課に転属になったシャーキー(バート・レイノルズ)。
部屋を移るシャーキーの後を「お前は最高の相棒だった」と言いながら見送ってきた同僚の足が階段の途中でピタリと止まる。
『すまん、シャーキー、ここでお別れだ。ここから階下(した)には行きたくないんだ』
風紀課は地下。多数の売春婦で喧騒渦巻く、かつては腕利きと呼ばれた刑事たちの吹き溜まり。
しかし、彼らの汚名返上名誉挽回捲土重来のチャンスは意外と早くやってきた…。
バート・レイノルズの俺様映画かと思いきや、周りのキャラが実に多彩で魅力的。
一晩1,000ドルの高吸娼婦ドミノ(レイチェル・ウォード)。「ブレードランナー」のショーン・ヤング、劣化前ミラ・ジョボに連なるハスキー・ビューティー。
あと2年で恩給が出る事無かれ主義の風紀課長、チャールズ・ダーニングのオロオロぶりが妙に可愛い。
『検死官に鑑識に総務課に風紀課・・なんで殺人課がいないんだぁ!』
『・・連絡してません』
そして、本作の事実上の主役、イカレサイコ暗殺者ビリー役のヘンリー・シルヴァ。
コカイン吸って、ヤクと鎮痛剤のカクテル錠剤貪って、いざ出陣。銃声もかき消す「ア~!」の絶叫。
『あいつは木の杭を刺して埋めろ。4発もぶち込んだのに死なないなんて…』
その死に際はスタント史に残ります(写真中央)。
バート・レイノルズの演出手腕ってあまり評価高くない(と言うかまったく評価されていない)ようですが、オープニングの“街”の切り取り方とか、選曲のセンスとか、キャラクター配置のバランス感覚とか、(少なくとも本作に限っては)もっと褒められて然るべきではないかと思います。
劇中、登場する謎の中国人カンフー使い忍者にはちょっと引きますが、演っているのがダン・イノサントとなると文句も言えません。