「大追跡」の遊撃捜査班、「非情のライセンス」の特捜部、そして「シャーキーズ・マシーン」の風俗課。
下手打った刑事の、刑事しかできない人間の吹き溜まり。疎まれし人間の胸に宿る矜持と反骨。
ここに北欧(デンマーク)というファクターが荒涼の誉れを上塗り。ささくれ立った男ふたりの息の合わないバディ・ムービー。
「特捜部Q 檻の中の女」(2013年/ミケル・ノルゴート監督)
殺人課の札付き刑事カール(どうしても刑事とカールの間に「犬」って入れたくなるなあ)は、現場での判断ミスで部下を失い(ひとり死亡、ひとり寝たきり)、自らも大怪我を。
3か月後、現場に戻ったカールに言い渡された異動通知。「特捜部Q行きを命ず」
地下の物置部屋(基本ですね)、未解決事件の残務処理(書類整理とも言う)、相棒はひげモジャなクルド人。
『ここは終着駅だ。とっとと荷物をまとめて元の部署に還れ、ハッサン』
『アサドです。倉庫で2年間スタンプ押しだけをしてきました』
膨大な資料の山。目に留まった5年前の女性議員失踪事件。フェリーの中で行方不明。処理は飛び込み自殺。勿論、死体は上がっていない。
勝手に再捜査に動く2人。状況証拠だけが積みあがる中、二人は確信します。
これは自殺なんかじゃない。
加圧機という拷問機能付き檻の中に囚われた女。犯人の目的(動機)は…。
「ザ・セル」「ソウ」「マーターズ」に通じるちょっと猟奇な感じが嫌々…ではありますが、犯人の執念深さには親近感が湧きました。一度復讐をすると決めたら何年経とうが必ず実行。見習いたいものです。
題材は原作の最初のエピソード。コンビ結成、特捜部始動という「初回90分スペシャル」な内容。
息合わない、ノリ合わない、ソリ合わないカール(ニコライ・リー・コス)とアサド(ファレス・ファレス)がコンビになっていく過程が面白い。
密度が濃い割に混乱の少ない良質なミステリーです。