デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【それはセッション】異動辞令は音楽隊!【太鼓を打つ刑事】

『坂本、セッションって知ってるか? 俺は音楽隊で、お前は刑事だ。同じ警察官だ。違うパート同士セッションする。それでいいじゃないか』

多分こうなるんだろうな、という想いの裏には、こうなってほしいな、という願望があります。

決して裏切られる事のない予定調和。お約束という快感…を期待していたら変に生々しいノイズが混入して尻の据わりが妙に悪い。

「異動辞令は音楽隊!」(2022年/内田英治監督)

犯罪捜査一筋30年の鬼刑事・成瀬司(阿部寛)。昔ながらの足で稼ぐ捜査を信条とし、事件解決の為には法令逸脱も厭わない。サラリーマン化した部下・同僚には容赦ない罵声を浴びせる。

その矛先は時に本部長クラスの上司にまで向けられ。

遂にはパワハラを告発されて異動。異動先は音楽隊(広報課課長を兼務するので形としては栄転。因みにパートはパーカッション。打楽器全般)。

警察音楽隊」は「カラーガード隊」とセット。


ラジオライフ」読者には『森伸之の婦人警察官制服図鑑』(1987年12月号~1995年12月号までの全97回に渡って連載)でお馴染みですね。

明確に左遷であったり、学生時代に吹奏楽部だったというだけの理由だったり、要するに望んで来たわけではない「はみ出し者集団」に真剣さやチームワークなどあろうはずもなく。


まぁちょっと「シャーキーズ・マシーン」(もしくは「フラガール」)な匂いのする集団がひとつにまとまっていく(最終的には功労をあげる)過程を音楽と涙と笑いで綴っていくわけで、その部分に関しては十分に成功していると思います。

特に心離れてしまった娘(高校生。バンドやっている)とのセッションとか良い感じでした。


ここに混入されるノイズが、独居老人を狙ったアポ電強盗事件なのですが、これがエグい。

警察を騙って犯罪防止の注意喚起をしながら、自宅に現金があるか、どこにあるか、を電話で聞き出し、直後に宅配業者を装って訪問。玄関開いた瞬間、スパナで殴り倒して現金強奪。

このアポ電強盗グループのリーダーを追っている最中の異動辞令でした。

異動の原因はパワハラ内部告発だったのですが、告発されても仕方ねーよなー、なレベルなんですわ、これが。

コンプラで雁字搦めな状況を批判するにしては事例が不適切(逆に「やっぱコンプラって大事だよね」とすら思えてしまう)。

ここいらへんが「目的の為なら腐敗も厭わず清濁併せ喰らう」役所広司@孤狼の血との役者の、そして演出家(白石和彌)の違いでしょうか。

事件を追う主人公の母親(本作では倍賞美津子)が認知ボケボケという設定は同じ白石監督の「凶悪」でも扱っていましたが、あれに比べると何か表層的で焦燥感が伝わってまいりません。

阿部寛を使うのなら、思いっきり人情喜劇に振り切ってしまった方が良かったかもしれません。

阿部寛が追い続けたアポ電強盗グループのリーダーは小沢仁志でした。顔隠していたから気づきませんでした。特別ゲストですね。


ついでと言ってはなんですが、「刑事が太鼓」で思い出したのが、

特捜最前線/第226話・太鼓を打つ刑事」(1981年9月16日放送/辻理監督)

盛岡で発生した火炎瓶によるバス放火事件。燃え盛るバスの中には刑事の妻が乗っていました。

8年後、刑事は警察音楽隊で太鼓を叩いていました。捜査本部解散後、東京に逃げたという犯人をひとり追うために。

この刑事役が倉田保昭。何とGメン草野刑事がゲスト出演。この3日後、9月19日のGメンは「香港カラテV.S赤い手裏剣の女」(翌週PART2)。

局も週も股に掛けた倉田保昭の大活躍でした。


「太鼓を打つ刑事」にはひし美ゆり子もゲスト出演。アンヌとドラゴンとアカレンジャーと本郷猛。

素晴らしいセッションでした。

★ご参考色々

 

 

 

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