菅貫太郎(すがかんたろう)。
日本に悪役数あれど、この人くらい馬鹿殿・悪代官が板に付いた役者さんはいないでしょう。
テレビの時代劇でこの人が出ていないシリーズなぞ存在しないのではないかとすら思えます。
白眉は「十三人の刺客」の松平左兵衛督斉韶(写真上)ですが、本作の松平斉厚(なりあつ)も捨てがたい馬鹿殿です。
「十一人の侍」(1967年/工藤栄一監督)
傍若無人な振る舞いを忍(おし)藩主・阿部正由に嗜められた館林藩主・松平斉厚(菅)が逆ギレして阿部を殺害(目玉に矢ぴゅーん)。
忍藩が訴え出るも将軍家の血を引く(←史実ではない)斉厚はお咎め無し、どころか非は忍藩にあるとされ、お家断絶、領地召し上げの非情な沙汰が。
おのれ斉厚、主君の恨み晴らさでおくものか・・という工藤監督の代名詞となった“集団抗争時代劇”3部作の大トリです。
暗殺隊は切腹による経歴抹消組を中心とする十一名なのですが、リーダー夏八木勲と里見浩太郎、途中から仲間に加わった西村晃以外は“その他大勢”なのが残念。
あと敵側の智恵袋が大友柳太郎ってのが・・(いまいちキレ者に見えない)。お腹真っ黒な老中水野越前守を演じた佐藤慶は文句無しでしたが。
暗殺側では西村晃がピカイチ。
『昔一緒だった女が言っていた。今に殿様のいない時代が来るってな。俺は殿様の首が欲しい。斬りたいんだ!斬らせてくれい!』
水野の奸計に嵌められ、一度は中止した暗殺計画でしたが・・。
豪雨の中、ただひたすらに斉厚の首目指して突撃する十一人。
伊福部昭先生の「海底軍艦」+「大魔神」な音楽が悲壮重厚5割増し。
若干の食い足りなさは残りますが、肩に力の入る王道時代劇です。
※参考:「十三人の刺客」→2008年2月26日
「犬死の美学/野良犬の矜持。 大殺陣」→2011年2月1日