「最後の狙撃者 T・M 1899.10.9. プレスコット アリゾナ」
SAAグリップの内側に記された刻印。思わず頬ずりしてしまう伊達。
優作のナルシストぶりが頂点を極めた瞬間。
SAAを神々しく扱った邦画として、カクテルのレシピというものを初めて知った作品として、そして勿論、松田優作の代表作として、忘れえぬ傑作です。
「野獣死すべし」(1980年/村川透監督)
刑事から拳銃を奪い、地下カジノを襲撃する伊達(優作)。
良く観ていないと警察官用拳銃がどこでSAAにすり替わったのか分かり難いですが、カジノで三人の用心棒(安岡力也/山西道広/トビー門口←ナイスすぎる面子)と撃ち合った時に、トビーが持っていたSAAを拾っているんですね。
SAA自体はトビー所有のモデルガンですが、グリップは実際に使われていたアンティークもの(こちらもトビー私物)。
つまり、内側の刻印は狙って入れたのではなく、最初から(そう、1899年から)入っていた本物だそうです。
私もそんなもの見つけたら頬ずりしちゃうでしょうね、きっと。
SAA、ウッズマン、M16、チーフスペシャル…銃声はショパンの調べ(どうしているのでしょうか、小林麻美嬢は)。
物議を醸したラスト・シーン。
一命を取り留めた室田日出男の追撃か(シナリオには包囲する警官隊の記述があったとか)、それとも全てはリップバーン・ウィンクルに振舞われたお酒(XYZ)が見させた夢だったのか。
勿論答えなんかありません。理屈より印象を選んだ、ただそれだけの事です。
公開時の併映は「ニッポン警視庁の恥と言われた二人 刑事(デカ)珍道中」(斉藤光正監督)。
見終わった直後はコメディ・タッチの「デカ珍」を面白いと思いましたが、一週間も経てば「デカ珍」のことなぞ1カットたりとも。
脳裏をよぎるのは優作のあの顔この顔あの演技。つくづく傑作なんだと思います。
※参考:「追悼:佐藤慶。 野獣死すべし」→2010年5月7日
「りりィ×優作×オールド・クロウ。処刑遊戯」
→2010年10月8日
「見所は風吹ジュンの…。蘇える金狼」→2010年11月30日