「美味しい。バーボンって初めてだけど。・・OLD・・CROW?」
松田優作で1本というご無体な質問があれば、迷わず「野獣死すべし」ですが、2本選んでいいならかなりの確率でこれ。
遊戯シリーズ最終章。前作まで(「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」)の特徴だったコミカルな要素(探偵物語に継承)を徹底排除。
行きずりの女(りりィ)を人質にとられ、組織を追われた殺し屋の暗殺を請け負った鳴海昌平(優作)。
台詞は極限まで切削。ドラマが成立する分水嶺一歩手前の綱渡り。触れれば切れるハードボイルドです。
設定や展開としてのリアリティなぞビタ一文ありませんが、リアリティなんてものはグラスに注がれたオールド・クロウ(私生活でも優作愛飲)の中にあればそれで十分です。
二人目のターゲットとなるのがトビー門口で、警視庁に拘留中という設定なのですが、この人、公開時、拳銃不法所持で本当に拘留されておりました。劇場で「リアルだなぁ」と感心した覚えがあります(笑)。
で、トビーさんが参加したせいか、ガン・アクションは格段に進歩。トレード・マークの44をオートマチックに持ち替えて長回しな銃撃戦を展開しております。
マメなマガジン・チェンジはリアルですが、バレル・スライドをしないのは当時のステージ・ガンの構造上の宿命でしょうか。
私は、「いや、優作はきちんと発砲数を計算していて、マガジンは空だがバレルには一発残っている状態の時にマガジン・チェンジをしているから初弾バレル装填の必要はないんだ」と脳内補完しながら観ておりましたが・・。
優作が途中何度か訪れる時計屋の主人・森下愛子が実に癒し系でいい感じでした。
『そんなに簡単に男の人に声掛けちゃ駄目だよ。最も危険が危ないよ』
この年、村川監督は、本作と「蘇える金狼」「白昼の死角」「探偵物語(TV)」「西部警察(TV)」と八面六臂の大活躍。思えばこの頃がこの人のピークだったのかも(しみじみ)。
※参考:「追悼:佐藤慶。 野獣死すべし」→2010年5月7日