
画面一杯に“海は死にますか”“山は死にますか”のテロップ。
なあ、折角、当時の天気まで書き込んだ歴史年表を作って歴史に忠実たらんとした笠原和夫の脚本をこんな歌でぶち壊すなよ。
「二百三高地」(1980年/舛田利雄監督)
軍上層部と市井の人々(予備役軍人)双方の視点から日露戦争の旅順攻略を描く王道歴史スペクタクル・・なのですが。
オールスター×大規模戦闘シーンの割にはケレンが全く無く、淡々。3時間引っ張るにはちょいと地味過ぎるかと。
ロシアを敬愛していると公言する中隊長・古賀(あおい輝彦)が、「ロシア人は一人残らず自分の敵であります!」と言い切るに至る過程もちと甘い。
この辺りは、純朴な青年弁護士(マイケル・モリアーティ)が、ナチスの中で冷酷な軍人に変貌していく「ホロコースト/戦争と家族」(1978)の方が一枚も二枚も上手。
すぎやまこういち氏の音楽も実に何と言うか「ああ、よくこういうシーンにはこういう音楽がかかるよねぇ」という前時代的超ステレオタイプで最早パロディ。
昨日レビューの「ゴジラ対ビオランテ」も氏の作曲なのですが、全く画面に合っておりませんでした(おかげで伊服部サウンドが際立つ際立つ)。
やはり、本作の見所は日露両国の武器合戦。
私のお気に入りはロシア軍の機雷攻撃。何とトーチカから船舶用の機雷を手掴みで投げ下ろすという荒業。その爆発力は手榴弾の比ではありません。
日本軍も負けてはおりません。沿岸警備用の対艦砲「28サンチ榴弾砲」(1砲2,600kg)十八門を投入。
「奴らを石器時代に戻してやる!」的大爆撃。1発217kgの堅鉄破甲榴弾16,940発が雨あられ。
結局、二百三高地を獲ったのは、乃木の采配ではなく、28サンチ砲と、その土台を短期間で固めたコンクリート職人(銃砲兵)の技術力でした。
※ここ↑だけ抜き出して「その時、歴史が動いた」(「プロジェクトX」でもいい)的特番作ってください、NHKさん。