デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

その車体は熱い唇。クリスティーン

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「OK. SHOW ME!」

ボコボコのスクラップにされた真っ赤なプリマス・フューリーが、アーニー(キース・ゴードン)の目の前で自己再生・・。

なんという妖艶なシーンでしょう。

「クリスティーン」
(1983年/ジョン・カーペンター監督)


カーペンター的には「あまり気乗りがしなかった」作品らしいのですが、それでこの出来とは。流石カーペンターです。

家で悶々(高圧的両親)、学校で悶々(イジメられっ子で彼女無し)のアーニーが一目惚れしたのは、廃車に等しいポンコツ58年型ブリマス・フューリー「クリスティーン」。

寝食惜しんでチューン・ナップ。滴るような悩ましさで蘇ったクリスティーン。

同時に内気でオドオトしていたアーニーも変貌。校内イチの美女をゲットする行動派に。

ただ困った事がひとつだけ。クリスティーンは嫉妬深く、復讐心旺盛な車でした。

ドン詰まりの青春と復讐は原作者スティーブン・キングの得意とする所。

原作だと車のトランクに入っている前所有者の怨念がアーニーに取り付くという設定のようですが、カーペンターは意思を持った車との“恋愛関係”にシフト・チェンジ。

カーペンターはこの脚色を「失敗」と考えているようですが、いやいやいや、大正解だと思います。

悪童たちにボロクズのように破壊された体を悪夢のような美しさで自己修復し、犯人をひとりひとり血祭りにあげていく様は恍惚感さえ漂います。

マニュファクチュアな特撮が素敵。CGでいくら車が変形してもこんな色気は出せません。