“I Can’t Murder Anybody.”
“We Don’t Murder, We KILL.”
“Murder, Kill, It’s The Same Thing”
“We Don’t Murder, ENEMY We Kill.”
アメリカ側とドイツ側双方で交わされる同じ会話。
「フルメタル・ジャケット」の“He(GOD) Plays His Game, We Play Ours”というハートマン軍曹の教えは、この会話の延長線上にあるんだと思います。
一種の詭弁ですが、戦争という極限状況の中で世俗のモラルから軍人(特に新兵)の心を守る方便のようなものなのでしょう。
その極限状況を生き延びた第一歩兵師団(The Big Red 1)戦いの記録。
「最前線物語[リコンストラクション]」(1980年/サミュエル・フラー監督、2004年/リチャード・シッケル再構築)
4人の若者と一人の軍曹のお話が、40分を超える追加シーンにより163分の一大戦争叙事詩となって復活。
所謂ディレクターズ・カットではありません。
7万フィートに及ぶ膨大なフィルムをフラー自身が残した撮影台本と、フラーの手によるプロモーション映像を手がかりに再構築(リコンストラクション)したものです。
真の姿はフラーの頭の中にしかありませんが、スタジオ(ワーナー)が切り刻んだ劇場公開版にはショックを超える落胆を感じていたようなので(フラーの初期構想は4時間バージョンだったとか)、少なくとも80年の公開版よりは遥かに監督の理想に近づいているのではないかと思います。
にしても、20年以上放置されていた劣化フィルムから必要な部分を探し、取り出し、1コマ1コマ修正し、音を重ね、画を繋ぎ・・気の遠くなるような作業をやり遂げたスタッフには心から敬意を表します。
オリジナルを観たのは1981年、横浜日劇(併映は「グロリア」)。それ以降再見無し。当然、細かいシーンは彼岸の彼方。
なので、ビフォー・アフターの比較は放棄。
ただ、163分になった事によって、(第一歩兵師団の眼から見た戦争の真実を語っているにも関わらず)神話的威厳すら湛える風格ある作品に仕上がったとは思います。
スターウォーズ直後で絶頂期のマーク・ハミルも良いですが(スターウォーズ以外の映画にマーク・ハミルが出ていると何故か嬉しい)、やはり軍曹役のリー・マーヴィンでしょう。
信用できる指揮官はリー・マーヴィンとジェームズ・コバーンだけです。
※参考:「戦争のはらわた」→2008年2月1日