ゾンビLOVE! 新・死霊のはらわた
“サム・ライミ製作総指揮”・・この得意満面な肩書きに騙されてはいけません。
関わりは諸説あって、ちょっとお金を出してあげた“おこづかい説”から、たまたま現場に居合わせたライミが「お、映画撮影か、頑張れよ」と激励しただけという“通りすがり説”まで様々。
いずれにせよ作品への関与はゼロと思われ、映画自体は素人が8mmで撮った自主映画です。
一旦、サム・ライミの名前を頭から消して、母校の学園祭で後輩が撮ったフィルムを観たと思いましょう。
するとあら、不思議。実に親近感が湧いてくるじゃありませんか。
「新・死霊のはらわた」(1986年/J・R・ブックウォーター監督)
ライミにあやかった邦題ですが、死霊なんか出てきません。前年に作られた「死霊のえじき」をリスペクトしたゾンビ映画です。
とある事情でゾンビ大発生。レンタルビデオ屋に現れたゾンビがレジに持ってきたのは「ゾンビ」「悪魔のいけにえ」「死霊のはらわた」「クリープショー」(写真上)。
いい趣味です(笑)。当然、店内大パニックですが、逃げ惑う客がどこか嬉しそうなのは気のせいか。
ここいらへんの勢いは「ゾンビランド」のオープニングに似ています。
お話はゾンビ殲滅部隊「ゾンビスクワッド」(リーダーの名前はライミ)、ゾンビを崇めるカルト教団(教祖の名前はジョーンズ)、感染者の血清作りに励む科学者(使えない助手の名前がサビーニ)らのすっとこどっこいな攻防戦。
所々、ライミ・リスペクトなカメラワークが見られますが、基本、演技も撮影も素人感満開。ただ、特殊メイクとギミックが(自主映画にしては)超ハイクォリティ。
おもちゃ感丸出しなモノも少なくありませんが、妙に微笑ましく、気分は学芸会を見守る親のそれ。
頑張ってるな・・うん・・偉いぞ。
しかも、本作のゾンビ、走るんです。ひょっとして最初に走った奴らなのでは。
メインビジュアルの“噛み付き防止マスク”(写真下)も、「羊たちの沈黙」の4年前なんですね。諸々先取ってるじゃないですか。
広い心で観れば楽しめます。きっと。
※参考:「死霊のはらわた」→2008年11月24日
「クリープショー」→2010年11月14日