デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

あと5年! バトルランナー

イメージ 1
良作か?と問われれば、間違いなく駄目駄目なのですが、嫌いか?と問われれば諸手を挙げて“大好き”と応えてしまう困った作品というのがあります。

これもその1本。

バトルランナー

(1987年/ポール・マイケル・グレイザー監督)

 

時は西暦2017年の近未来(あと5年だ!)。治安部隊のリーダー、ベン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、非武装市民無差別発砲の濡れ衣を着せられて投獄…。

されたと思ったら、中間の話を一気に端折って強制労働所大脱走

この展開の速さが素晴らしい。計画より実行(笑)。

脱獄に成功したベンでしたが、空港で捕縛。殺人ゲームショー「ランニングマン」に出演させられる事に。

この、体制側の人間が反体制へ、というパターンは「華氏451」から「リベリオン」に至る鉄板ストーリー。

囚人が生存権を欠けて戦うというのも「スパルタカス」からリメイク版「デスレース」に連なるお約束。

過激なゲームで国民の関心を政治から逸らすという姑息な戦法は「ローラーボール」で既に御馴染み(世の中、そんなに単純じゃないと思いますが)。

「ランニングマン」は名物司会者デイモンが仕切る殺人アトラクション。ハンターと呼ばれる追っ手から3時間逃げおおせれば自由の身・・という謳い文句は勿論嘘。

自由になったとされている過去の囚人は全員死体(画面の中ではハワイでバカンスを愉しんでいる事にされている)。

ベンの非武装市民無差別発砲もCG合成によって捏造された記録映像が流されています。

シュワのアクションも、馬鹿丸出しのハンターたちもナイスですが、この作品の凄い所は、嘘八百を垂れ流すマスコミと、それに熱狂する“自分だけは善意の固まり”と信じて疑わない視聴者の関係を見事に暴き立てている所でしょう。

アホタレな表層を保ちつつ、結構ヤバイ事をシニカルな笑いに包んで出す辺り、「ゼイリブ」と同じ箱に入っていると言えなくもありません(褒めすぎか?)。

司会者デイモン(リチャード・ドーソン)のキャラネタは、「ネットワーク」のピーター・フィンチなんじゃないでしょうか(現実に似たモデルがいたら御免よ)。

しかし、シュワって、この時すでに「I’ll Be Back」をネタにしていたんですね。

★追記…このレビュー書いた時は「あと5年」でしたが、景気よく追い越してしまいました。SFって難しいですね。