『聾唖者って誰の事ですか?』
『そ、それは、聾者って言おうとして…』
『聾者って誰の事ですか? 皆さんは聾者と中途失聴者と難聴者の区別もついていない。それなのにどうして私が差別されたなんて分かるんですか。わたし、この本を凄く楽しく読みました。それは差別されたことになるんですか。この本の主人公は私と同じで耳が悪いんです。でも恋愛をして幸せになるお話なんです。障害をもっていたら物語のヒロインになる事も許されないんですか。この本を私に薦めたことがいけないなんて、わざわざ新しい差別を作り出しているみたい。あなたたちこそ、本当は差別が好きなんじゃないですか?!』
先走って長々と引用してしまいました。ちょっと話を戻しましょう。
「図書館戦争」(2006年4月-6月放送/浜名孝行監督)
今更ですが設定をおさらいしておくと…
舞台は昭和の次の元号が正化になったもうひとつの日本。公序良俗を乱し人権を侵害する表現を規制するための法律「メディア良化法」が制定され、この法に基づいてメディアの監視権を持つ「メディア良化委員会」が発足。
不適切とされた創作物は、その執行機関である「良化特務機関」が取り締まり、執行に際しては武力制圧まで。
この弾圧に立ち上がったのが図書館。「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の自由法」を制定。自ら武装した「図書隊」を組織。やがて両者の抗争は武力衝突へ。
正化31年、高校時代に自分を救ってくれた図書隊隊員に憧れて図書隊に入隊した笠原郁が主人公。彼女が鬼教官・堂上篤の下で一人前の図書隊員に成長していくお話です。
要するに「華氏451」「リベリオン」(←どちらも作中に引用されています)の世界で繰り広げられる「スチュワーデス物語」ですね。
全12話。BD-BOXにはTV未放送エピが特典で収録されています(前置き長すぎだな…)。
「図書館戦争/BD-BOX収録特典TV未放送エピ・恋ノ障害」(布施木一喜演出)
本編の主役は“笑う正論”小牧幹久・二等図書正(写真1枚目)。
幼少期から彼を慕う幼馴染の少女・鞠江。中学生の時に突発性難聴となった彼女を励ますために小牧が貸し出した1冊の本。難聴者をヒロインにしたこの小説が思わぬ波紋を…。
クラスメイトが悪気無く漏らした『難聴者に難聴者の本を渡すなんて、その図書館員酷くない?』
あとは伝言ゲーム。生徒から生徒へ。その保護者へ。教師へ。『鞠江がかわいそう』『図書館員酷い』『差別だ』。
そして良化隊が障害者差別の容疑で小牧を拘束に…。
事象は違いますが、似たような経緯で世の中から抹消された作品が現実にあるのを我々は知っています。
「メディア良化法」は差別者の心の中に潜んでいるんですね。