最近、ニュースにはトンと疎くなっているのですが、なんでも西の方では公務員の刺青は個人の趣味なんだとか。
確か刺青というのは、所属する反社会的組織への忠誠と、一般社会に戻る事の拒絶の意思表示だったかと思うのですが、フリーダムな時代になったものです。
思うに“タトゥー”などと言う小洒落た横文字を使うから「ファッションだ」などという戯言がまかり通るのであって、表現上は“もんもん”“刺青”“入れ墨”のいずれかに統一すべきかと思います。
全身に もんもん背負(しょ)った 公務員・・・
Vシネの世界ではアリかもしれませんが、現実社会ではどうでしょう。
なんて事を考える機会にこの一本。
(1969年/石井輝男監督)
18禁で嫌ってほど裸が出てきますが、エロはどこにもありません。
冒頭、本筋とまったく関係のない処刑シーンが次から次へ。
磔、串刺し、鋸引き・・阿鼻叫喚のタイトルロール。
本編前半の舞台は謎の武家屋敷。借金の肩代わりに屋敷奉公に上がった女を待っていたのは、特殊性癖の人を歓待する売春ビジネス。
働く女たち(勿論、非合法に連れてこられた訳ですが)は皆全身にもんもんが。
この女が主役かと思いきや、話は跡目(と女)を争う二人の彫り物師(兄弟子・彫辰/小池朝雄、弟弟子・彫秀/吉田輝男)の勝負にシフト。
偶然にもひとりの女の背中に競作(彫秀が隠し彫を施した後に彫辰が上書き)。御前試合の結果は引き分け。
カットが変ると、何故か彫秀は師匠殺害の濡れ衣で遠島。更に彫秀の許婚(橘ますみ)を例の売春宿一味が拉致。物凄い展開の速さ。
彼らは刺青女たちを長崎に連れて行き、毛唐相手にショービジネスを展開して、最期には海外に売っ払うという元手ゼロの荒稼ぎを画策していたのでした。
ついに彫辰の手によって墨を入れられる許婚。
しかし、偶然にも長崎には島抜けした彫秀が!(勿論、島抜けの描写とかは一切無し)
師匠を殺し、自分をハメ、許婚を奪ったのが、女郎屋の女将、与力、そして彫辰の仕業であった事を知った彫秀は凄絶な復讐を開始。
由利徹、大泉滉がコメディ・リリーフ(女囚役。声だけ女性がアフレコ)で活躍しますが、全く以って笑えないのがご愛嬌(居たたまれない位ハズしています)。
合間に、海上火あぶりとか燭台目潰しなどが挿入され、〆は股裂き。
千切れ飛ぶ 肢体に被る 完マーク
「(刺青は)御前試合まで行われた芸術じゃないか」という意見があるやもしれませんが、肌の綺麗な女を片っ端から拉致して拷問にも似た墨入れをした挙句に観賞用の晒し者にしている、という所を無視しちゃいけませんぜ、旦那。
★ご参考