デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

方輪・キチガイ・裏日本。 江戸川乱歩全集/恐怖奇形人間

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大殺陣」(2月1日参照)の“お父ちゃ~ん!”も衝撃でしたが、本作の“おかーさーん!”も違う意味で衝(笑)撃。

自主規制抵触部分が多すぎて(ほとんど地雷原)、国内ソフト化不能なカルト作を特典満載の輸入版で鑑賞。

江戸川乱歩全集/恐怖奇形人間

(1969年/石井輝男監督)


「パノラマ島奇談」と「孤島の鬼」をベースに「人間椅子」やら「屋根裏の散歩者」やらのエッセンスを散らしたドクター・モローの島暗黒舞踏篇”

何者かに拉致され、精神病院に収監された外科医の卵・人見(吉田輝男)。

『俺は狂ってしまったのか? 違う! 俺はキチガイなんかじゃない!』


記憶の襞にかすかに残っている絶壁の景観と子守唄。これが“裏日本”のものだと知った人見は病院を脱走して能登へ。

そこで自分と瓜二つの富豪・菰田家の跡取り源三郎が急死した事を新聞で呼んだ人見は、墓を暴き蘇生を装って菰田家に入り込みますが・・。

由利徹のダダ滑りギャグを挟みつつ、マジなのか冗談なのか分からないサスペンスが展開、そして舞台は源三郎の父・丈五郎(土方巽)が楽園建設を夢見ているという島へ。

断崖絶壁をバックに暗黒舞踏を踊りまくる土方が圧倒的。ひたすら圧倒的(DVDのメニュー画面はこのシーンをさらに不気味に編集したものが延々リフレインされてBGVに最適です)。

彼の目指した楽園、それは人為的に作った(元は健康体だった)奇形人間が溢れ、奇形がマジョリティで健常者がマイノリティ(奴隷)となる悪夢のユートピアでした。

美女と顔面崩壊の男(近藤正臣・・らしい)を背中合わせに貼り付けた人造シャムをはじめ奇形乱舞・・そりゃソフト化は難しいわね。

こりゃ一体どうなるんじゃあ?と思った所で唐突に明智小五郎登場。一気呵成に状況説明と犯罪暴露。ああ、そうか江戸川乱歩だったよな、この話。

トントンと合理的(?)に話が片付き、なんだよこれで大団円かよと思わせて、伝説の人間花火「おかーさーん!」

最早言葉による追随不能「えっと俺は今何を観ていたんだ?」的衝撃。このインパクトだけでも語り継がれる意義があると思います。

※参考:「アブサン飲んで幻覚舞踏。女体渦巻島」
     →2010年3月26日

    「ひし美ゆり子万歳! ポルノ時代劇/忘八武士道」
     →2010年10月4日