デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

史実を華麗にフライング。 毒婦お伝と首斬り浅

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東てる美

今でこそ、渡る世間のファットな小姑ですが、若い頃は団鬼六(鬼繋がりか)にも可愛がられたSMの小悪魔(女王は勿論、谷ナオミね)でした。

「生贄婦人」に始まる鬼六ものから「濡れて立つ」など宇野鴻一郎ものに至る広範な守備範囲のロマンポルノ。

そして、「コレクター」「キング」をはじめとしたSM雑誌のカラーグラビアなど、随分とお世話になりました。

彼女の「ポルノ」「アイドル」「女優」というベクトルの総まとめ転換期に当たるのが本作ではないでしょうか。

「毒婦お伝と首斬り浅」(1977年/牧口雄二監督)

明治の毒婦と言われた高橋でんの生涯を描いた実録もの…ではありますが、大津一郎の脚本が「史実って何?」とばかりに景気良くフライング&トラベリング。

実際のでん(写真2段目左)が殺したのは、古物商の犯り逃げ親父ひとりだけ(得物は剃刀)ですが、映画では猟銃片手に殺す殺す(しかも相手はほとんど警察官)。

ノリは完全に「伝と市・俺たちに明日はない」。

正直、さして見所のある映画ではないのですが、お伝と斬首人・8代目山田浅右衛門吉豊(伊吹吾郎)の間に心の交流があったという虚構(実際にお伝の首を斬ったのは、浅右衛門の弟・吉亮)が効いていて、後味の良い(爽快感さえ残る)青春映画となっています。

特に斬首からラストカットへの繋ぎと構図が素晴らしく、ここだけで「観て良かったな」という気にさせてくれます。

石井輝男と並ぶカルトの巨匠、牧口雄二。いずれ他の作品も折を見て…。