『この私にたった一言、地球をあなたにあげます、と言ってくれないか』
歴代宇宙人の中でも屈指の知性を誇るジェントルマン、メフィラス星人の登場です。
「ウルトラマン/第33話・禁じられた言葉[英題:THE FORBIDDEN WORDS]」(1967年2月26日放送/鈴木俊継監督・金城哲夫脚本)
メフィラスは航空ショーを見物に来ていたハヤタ、フジ隊員、フジ隊員の弟サトルを拉致。
サトルを地球人代表と看做して、地球の所有権移転を迫ります。見返りは何百年・何千年の命と贅沢三昧。
『ボク一人がどんなに長生きしたって、どんなに豊かな暮らしが出来たって、ちっとも嬉しくなんかないや! ボクは地球の人間なんだぞ!』
メフィラスは自分の力を誇示するために、バルタン、ザラブ、ケムールの三体、そして巨大フジ隊員を街中に。
この三体のチョイスは絶妙。怪獣ではなく、いずれも侵略の明確な意図を持っていた知的生命体を複数操る事で力を誇示する事に成功しています。
が、しかし、本編の見せ場は宇宙人側ではなく人間側の非道さにあります。
「1/8計画」の意趣返しとして巨大化したフジ隊員(桜井浩子)がメフィラスの指示でビルを破壊(壊し方が女の子っぽくて可愛い)すると、警官隊が一斉射撃。
「撃たないでください。怪獣じゃないんですよ」という科特隊の言葉も聞く耳持たず。
『怪獣も同然です。撃て撃てぇ!』
科特隊と警察ってうまくいってないのか?(因みに発砲の指揮を執っている警察官はゴジラの中の人、中島春雄その人です)
白眉は何と言ってもムラマツ隊長。
イデと共にメフィラスの円盤に侵入、目の前には変身ポーズのまま硬直したハヤタが。
しかし、フジ隊員とサトルくんを発見したムラマツはハヤタを無視して脱出。「まだハヤタが!」と追いすがるイデを「もう時間が無い。急げ」と引き離して無理矢理置き去りに。
なあおい、どこかに監禁されていて見つからないとかドアが開かないとかいう状況じゃないぞ。目の前に部下がいるんだから担いででも連れて行ってやれよ。
結局、ひとり取り残されたハヤタが爆発の衝撃で倒れ、そのはずみでフラッシュ・ビームが焚かれてウルトラマン登場。
最後、皆のもとに現れたハヤタに一瞬バツの悪そうな顔をするムラマツでしたが、すぐにとりなすように「よかった、よかった。皆無事でよかった」。
お前が言うなよ。実は仲悪いのか、ハヤタと。
メフィラスは「私は諦めたわけではない。私に地球を売り渡す人間が必ずいるはずだ」と捨て台詞を残して退散。ダメ押しナレーションが入って幕となりました。
『青く美しい地球。我々はこの人類の故郷をあらゆる侵略から守らねばならないのだ。まして、地球を売り渡すような人間になってはいけない。メフィラス星人は今度はあなたの心に挑戦してくるかもしれない』