『明けの明星が輝く頃、ひとつの光が宇宙に飛んでいく。それが僕なんだよ。…さよならアンヌ!』
『待ってダン! 行かないで!』
『アマギ隊員がピンチなんだよ!』
シューマンのピアノ協奏曲イ短調と共に子供心に刷り込まれた特撮ドラマの最高峰。
同時にウルトラシリーズ製作スタッフにとっては以後長きに渡って“越えられぬ壁”となる呪縛の一編。
「ウルトラセブン/最終回・史上最大の侵略(前後編)」(1968年9月1日・8日/満田かずほ監督・金城哲夫脚本)
侵略者との戦いで疲弊しきったモロボシ・ダン。「今度変身したら死んでしまうぞ」と忠告する幻影の上司。
疲労が生んだ油断でゴース星人の地球侵入を許し、アマギ隊員を拉致され、自らも重傷を。
精密検査をされたら宇宙人である事がバレてしまう。ダンは傷ついた身体で基地外へ。
ゴース星人はアマギ隊員をスピーカーにして全人類の降伏を迫る。地底ミサイルがニューヨークを、ロンドンを、パリを木っ端微塵に吹き飛ばす。次は東京。
ゴース星人の地底基地を発見したウルトラ警備隊は、マグマライザーにありったけの爆雷を積み込んで無人特攻。このままではアマギ隊員が犠牲に。
そう、ダンが命を張ったのは、地球のためでも日本のためでもなく、ただアマギ隊員ひとりのためだったんですね。
ウルトラマンがハヤタ隊員ひとりの生命維持装置として地球に残ったように、セブンもアマギ隊員ひとりのために自分を捨てる決心を。
この辺り、金城哲夫のブレの無い作劇に感心します。
この頃の様子を虚実混ぜ込んで映像化したのが、
「私が愛したウルトラセブン」
この中で金城哲夫(佐野史郎。写真下)は苦悩していました。
沖縄人という出自を隠す事に。正義の使者であるウルトラセブンが、米軍を支える第七艦隊に見えてしまうことに。
脚本に行き詰った金城はアンヌ(田村英里子)に告白します。
『僕は日本人じゃないんだ。沖縄から来た沖縄人なんだよ』
『日本人でも、沖縄人でも金城さんは金城さんじゃない』
勿論この会話は市川森一の虚構であり、一種のファンタジーですが、ズドンと胸を突かれました。
セブン最終回の脚本を書き上げた金城は東京に別れを告げてひとり沖縄へ。
『ダンは死んで帰っていくんだろうか。もしそうなら、ダンを殺したのは俺たち地球人だ』
『そんなバカな!ダンが死んでたまるか! ダンは生きている。きっと生きてるんだ。遠い宇宙から、俺たちの地球を見守ってくれるさ。そしてまた、元気な姿で帰ってくる!』
金城哲夫。1976年2月23日、泥酔した状態で自宅(すき焼き店「松風苑」の敷地内。現在資料館)2階の仕事場へ直接入ろうとして足を滑らせ転落。直ちに病院に搬送されたが、3日後の2月26日に脳挫傷のため死去。37歳没。【Wikipediaより】