戦争や飢饉のモノクロ写真に被るクレジット。
最初に一枚看板で川谷拓三。
おお、拓ボン、ピンかよ。この年は「暴走パニック/大激突」「狂った野獣」「河内のオッサンの歌」「やくざの墓場/くちなしの花」もあるし、八面六臂の大活躍だな。
そして始まるノンストップ残酷ショー。
「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」(1976年/牧口雄二監督)
所は長崎。邪教徒(隠れキリシタン)を捕縛しては見せしめに惨殺する奉行・高坂主膳(汐路章)。
その加虐的変態志向はエスカレートの一途を辿り、もはやお笑いウルトラクイズの罰ゲーム(信楽焼きの狸に押し込んで蒸し焼き、回転棒に括り付けて油塗りながら丸焼き)。
以前、「裸のジャングル」のレビューを書いたときに“こんな死に方だけはしたくない”と書きましたが、勝るとも劣らない嫌々刑の数々です(大抵の人はここで引く)。
偶然、邪教徒の女と恋仲になってしまった与力・佐々木伊織(風戸佑介)の悲劇。
ここまでも大概でしたが、ここからの奉行の蛮行は悪辣・悪趣味・下品の極み。
仕置人がいれば間違いなく背骨外して滅多斬りにする所ですが、何と邪教徒征伐の業績が認められて出世街道まっしぐらという驚嘆のオチがつきます。
タイトルロールの“牛裂きの刑”が登場するのは約40分経過した辺り。
お、もう見せ場出しちゃうのか、と思いつつ、何か忘れているような…。
あ、そうだ、拓ボン。拓ボンどうした? 主役なんじゃなかったっけ?
実は本作は2部構成のオムニバス。拓ボンは後半の主役なのでした。
揚屋遊びの支払い14両の代償として1年間の肉体労働をする羽目になった捨蔵(川谷拓三)。
と書くと、まんま「幕末太陽傳」の居残り佐平次ですが、捨蔵が見るのは郭の地獄。
ねんごろになった遊女と足抜けして江戸まで逃げて来ましたが…。
陰惨な話も拓ボンのキャラで妙に明るく感じるから不思議です。
もう最後のノコギリ挽きなんか笑うべきか引くべきか。
そう言えば拓ボン、2年後の大河ドラマ「黄金の日々」でも最期はノコギリ挽きでしたね。
こういうとことんツイていない役演らせると天下一品だなあ、この人は。
★ご参考