世間では駄目駄目の烙印を押されているようですが、何をおっしゃいますやら。
本作こそ、最高・最強(凶)の続編です。
「悪魔のいけにえ2[完全版]」
(1986年/トビー・フーパー監督)
1作目のセルフ・パロディというネガティブな観方をしている人が多いですが、これも間違い(多分)。
コメディなんですよ、最初から。
それを“1作目に匹敵するモンスターの誕生”を期待した制作会社が勝手に編集しちまったもんだから(ついでに言えばクランク・イン直前に予算を100万ドルも削っちまったりするから)、ちょっとバランスの悪い仕上がりになってしまっただけです。
それでも、オリジナル(改変前のシナリオ、という意味)の持っていた破壊力は十分残っています。
車を全力逆走させながら、併走するヤッピーを車ごと(しかも前作ヒッチハイカーのミイラを使った二人羽織で)切り刻むという衝撃のオープニング。
記号からキャラに昇華した恋するレザー・フェイス。
熱した針金ハンガーで頭皮を焼いては食っているウルトラ変態チョップ・トップ(ビル・モーズリィ)。
零細企業経営者の悲哀を滲ませながら今日もソーセージを作るソーヤ父(ジム・シードウ)。
そして彼らを脇に追いやる怒れるダブル・チェンソー、レフティ(デニス・ホッパー)。
ここにマリリン・バーンズに引けをとらない悲鳴を披露し続けるDJ(キャロライン・ウィリアムス)と、永源遥に引けをとらない唾を吐き続けるLG(ルー・ペリーマン)が乱入。
ここにトム・サヴィーニの特殊メイクが加わって、もう制御不能、百花繚乱キャラ祭り。
デニス・ホッパーは出番になると回転(スピン)して、眼を回し、ちょっと危ない目つきになったところで本番に臨んでいたそうです(なんちゅー役作りだ!)。
完全版DVDには、未使用シーン、メイキング各種、裏話満載のコメンタリー(2種)が収録されています。
当初予定のオープニングは、雲の合間から見え隠れする月を捉えたもので、フーパーの怪奇と幻想趣味満開のものでした(ちょっと「悪魔の沼」チックかも)。
また、最初のシナリオではレフティとDJは生き別れの親娘という設定になっており、ふたつの家族の物語という構造をとっていたようです。
チョップ・トップを蹴り落とし、チェンソーを振り回しつつ勝利の咆哮をあげるDJに「激突!」のデニス・ウィーバーを重ねてしまいます(リチャード・マチスンの原作ではラストで主人公は獣の雄叫びをあげる)。
1作目が偶然の相乗効果が生んだある種の化学反応に支えられた神懸り的傑作であることは間違いないですが、本作も十分胸を張れるだけの良作ではあると思います。