デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ちょっとキツ目の酒を用意して…。 ロード・オブ・セイラム

イメージ 1

 
まずはちょっとキツ目の酒を用意しましょう(私はマリアッチのオンザロックにマリブをひと垂らし)。

時間は深夜。ボリュームはデカ目(ご近所の手前があればヘッドホン)で。

「ロード・オブ・セイラム」

(2012年/ロブ・ゾンビ監督)


知らないうちに劇場公開されてソフト化されたゾンビ監督最新作(すんなり劇場公開されたのって初めてじゃないか)。

これまでのような、畳み掛ける破天荒さ、ゴアマックスな破壊力はありません。雰囲気系です。

ローズマリーの赤ちゃん」と「アルタード・ステーツ」を足して割ったような。

現代のセイラム(町並みは本当のセイラム)。地元のラジオ局でDJを勤めるハイジ(シェリ・ムーン・ゾンビ)の元に届けられた木箱入りのレコード。

その不気味な旋律が電波に乗った時、320年前の魔女裁判の呪いが解き放たれる。

わずか22日で撮り上げた突貫映画ですが、美術班・照明班・撮影班が無茶苦茶良い仕事をしています。

手持ちは一切使わず、固定orドリーによる撮影は安定感抜群(ハンディのユラユラ画面をリアリズムだと思っている奴はこれ観て反省するように)。

シンメトリー+奥行きの構図は小振りな「シャイニング」。

被写体をフォローしていると一瞬何かが写り込む演出はカーペンターチックです(火あぶりにされた魔女のリーダーは「ゼイリブ」のヒロイン、メグ・フォスター)。

セイラムの町にかけられた呪いを解き放つ現代の魔女3人も実にいい感じ。

折角なので、各々の代表作も並べておきました(写真一番下)。

左からパトリシア・クイン(ロッキー・ホラー・ショー)、ディー・ウォーレスハウリング)、ジュディ・ギーソン(茂みの中の欲望)。

BDには特典としてゾンビ監督の音声解説が。

パトリシア・クインは長台詞も完璧に暗記してくるがアドリブに弱い(台本を削ったり、相手が台本にないリアクションをすると固まってしまう)とか、

ディー・ウォーレスが「もう善い人は飽き飽きよ」と嬉しそうにフライパン撲殺シーンを演じていた、なんてエピソードを披露してくれています。

慌てずはしゃがず淡々と製作当時を振り返るゾンビ監督の語り口はいつもながら好感が持てます(個人的“音声解説が上手だと思う監督”ベスト3は、フリードキン、カーペンター、ゾンビです)。

壁紙ひとつ、小道具ひとつを眺めているだけでも結構快感。

サイケデリック・トリップ・エンターテイメントと(配給会社が)名づけたようなので、酔っ払いながら観るのが吉でしょう(てんこ盛りな婆さんヌードはしらふだとちとキツい)。