『あの人の…言葉を伝えます』
構成員1万5千人を誇る日本最大のやくざ組織、谷口組の三代目が逝った。その時、妻は…。
「制覇」(1982年/中島貞夫監督)
本来、三部作になるはずだった高倉健の「山口組三代目」に完結編があるとしたら、こんな形になったのでは?と思わせる内容です(組長の回想する幼年期の描写が高倉健の幼年期描写と丸被り。綺麗に繋がっています)。
にしても、田岡一雄が心臓病で死んだのが82年7月、本作が公開されたのが同年10月。
企画が立ち上がったのがどの時点なのかは分かりませんが、ほぼリアルタイムなスピード仕事。
しかもオールスター。なんか「エンテベの勝利」を思い出してしまいますが、やっつけ仕事になっていないのは流石。並み居る大御所たちを見事に捌いています。
ドライな三船に対し、情念で押す岡田。見事な“三代目・姐”。
谷口組(山口組)組長・田所政雄(田岡一雄)に三船敏郎、その妻に岡田茉莉子、若頭・河上剛二(山本健一)に菅原文太、権野強志(菅谷組組長、ボンノこと菅谷政雄)に若山富三郎。
他に丹波哲郎、鶴田浩二、梅宮辰夫、岸田森(遺作!)、名高達郎、秋吉久美子、中井貴恵などなど、どのシーンを見ても「この人誰?」というカットが存在しない豪華キャスト。
岸田森は看護婦付き添いで最期の演技。
皆いい味を出していましたが、一際光っていたのが海渡仙一(モデルは最後の博徒・波谷守之)を演じた小林旭。
『よかったじゃねぇか。戦争が終わってホッとしてるんだろ? お前だけじゃねぇよ。俺もさ』
出番は多くありませんでしたが、一瞬で場をさらう存在感。この人の若い時は滴るような色気がありました。
そしてもうひとり、組長の部屋住み運転手を務めた清水健太郎。
結構、重要な役回りのはずなのに何故かノンクレジット。
76年に「失恋レストラン」、77年には同曲でレコード大賞獲得、紅白歌合戦出場、寺山修司監督の映画「ボクサー」に出演(文太と共に主役)とそれなりにビッグネームだったはず。
大麻使用による第1回逮捕は83年なので、まだ綺麗な経歴だったはずなのですが…。
配役でひとつ文句があるとすれば、組長の息子を演じた桂小つぶ。こういう馬鹿にしか見えないタイプは生理的に駄目。彼が出てくる度にイラっとしてしまいました。