『ええか、ワシが有名になったらの、ワシの友達や言うて言いふらしてええで。よう憶えときや、ワシの名前は成瀬清じゃ。憶えときや、成瀬清やで』
山口組三代目組長・田岡一雄が京都のナイトクラブ「ベラミ」で銃撃された所謂「ベラミ事件」は、大阪抗争のターニングポイント兼ハイライトなので実録モノでは避けては通れぬ一大イベントですが、狙撃犯である鳴海清と彼が所属していた大日本正義団の視点からこれを描いたものはそう多くはありません。
すぐに思い出すのは1979年の中島貞夫監督作「総長の首」ですが、これもかなりな異色作でした。
★突然ですが、ご参考。
はてさて今回は…。
「日本やくざ抗争史~首領(ドン)襲撃~」
(2014年/金澤克次監督)
構成員2万を誇る丹波組(山口組)の枝の木島組(佐々木組)組員が起こした松岡組(松田組)賭場での小競り合い。
ボコりボコられ、木島組が松岡組の組員を喫茶ジュテームに拉致りましたが、拳銃持った松岡組殴り込み部隊が銃弾振りまいて返り討ち(所謂「ジュテーム事件」)。
若いもんがしでかした事とシラを決め込む松岡に丹波側も『じゃあこっちも若いもんガンガン飛ばしたろうかいの』で抗争拡大。
丹波としては適当なところで鞘を納めるつもりでいたようですが、何をトチ狂ったか松岡の特攻部隊である大日本義勇団(大日本正義団)が丹波の本家事務所に銃弾喰らわしちゃったからさぁ大変。
抗争拡大は望まないが、黙って引く訳にもいかなくなった丹波組は白昼堂々、大日本義勇団のアタマ殺(と)って(所謂「日本橋事件」)、一方的に終結宣言。
これ以上丹波を怒らせたらマジで全員ぶち転がされると感じた松岡組も折れて抗争終了。
納得いかないのはアタマ殺られた大日本義勇団。特に会長に心酔していた成瀬清(鳴海清)は会長の遺骨齧って復讐宣言。
『ワシの狙いはただひとつ…三代目丹波組組長、山台富士男じゃ!』
成瀬役は小沢仁志。鳴海本人は1952年生まれ。ベラミ事件が起きたのは1978年なのでざっくり26歳です。小沢のアニキは撮影時52歳くらいだと思うので綺麗にダブルスコア。
う~ん、別に史実に揃える必要はありませんが、もちっと若い人の方が良かったのではないでしょうか(因みに「総長の首」でこの役を演じたのは若き日の清水健太郎)。
丹波組組長(田岡一雄)役は白竜。ちょっと引っかかるものはありますが、まあいいです。
グッと来たのは丹波組若頭、谷健組組長・谷岡健三(山口組若頭、山建組組長・山本健一)を演じた小沢和義。
怖ぇ怖ぇ。本物と見紛う迫力。片目に細工までして死神感満開。
山本健一にそのような身体的特徴があったという話は聞かないですが、役作りって事でしょうか。
因みに小沢さん、2016年の「CONFLICT ~最大の抗争~」とか、2017年の「狂犬と呼ばれた男たち 外道ヤクザ」でも同じ仕込みをしています(気に入っちゃった?)。
左が「外道ヤクザ」、右が「CONFLICT」
史実では、鳴海清は松田組の枝である忠成会に匿われていたものの、持て余されて(勝手に新聞使って山口組に喧嘩売ったりして手元に置いておくリスクが高過ぎて)殺された(もしくは裏で山口組に引き渡された)のではないかと言われていますが、そのまんまだと華が無さすぎるので無理矢理ベラミのホステスとの恋物語とか入れて、最後も見せ場(拉致られたホステスを助けに行って大立ち回り)作っちゃってます。
最後に取って付けた様に「その後、六甲山の山中で腐乱死体で発見された」というナレーションが入って強引に締めていますが、作劇としては苦しい限りでございました。
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★本日6月2日は「猪木舌出し失神事件」の日(☜勝手に命名)。
1983年のこの日、蔵前国技館で行われた第1回IWGP決勝戦でハルク・ホーガンのアックスボンバーを喰らったアントニオ猪木がリング下へ転落、舌を出して失神するという「事件」が起こりました。
翌年の第2回IGWP決勝戦と抱き合わせた記事はこちら。
★ おまけでホーガン・フィギュアのご紹介も。