≪殺(と)れい! 殺ったれい!≫は「仁義なき戦い 広島死闘篇」の惹句ですが、この言葉がピッタリ当てはまる殲滅絵巻。
「武闘派極道史 竹中組 組長邸襲撃事件」(2005年/辻裕之監督)
監修に竹中正、語りに竹中武を配した正統派実録もの。
山一抗争に関しては皆もう知ってるよね?って事で細かい経緯は全部端折って「四代目山口組組長・竹中正久暗殺事件」5ヶ月後(竹中組長は回想でも出てこない)からスタート。
竹中組長暗殺指示を出した山本広会長宅に後藤組員が大型ダンプカーで突っ込み、警備の兵庫県警機動隊と銃撃戦。いきなり西部警察。
本作、実録物の定石である固有名詞(勿論全部変名)のテロップがありません。
なので、分かる範囲で実名表記とします。
主な役者陣は知名度の高くない若手で構成されていますが、所々に大物が友情出演。
一和会幹事長補佐、赤坂進を殺るヒットマンに寺島進(OPの友情出演テロップにもなかったサプライズゲスト)。
山本広会長宅を警備する制服警官に本宮泰風、岡崎礼、小沢和義。温厚で人の良さそうな小沢和義はレアキャラです。
山本広会長宅空爆計画(!)で使用するヘリの仲介業者に小沢仁志。こちらも気の弱そうな一般人でいつもとは違う味付け。
タイトルになっている「組長邸襲撃事件」とは、1988年5月、安東美樹(風間貢)と安東会組員4人が一和会会長・山本広の自宅を自動小銃と爆弾で襲撃、警備中の警官3人(前出の本宮・岡崎・小沢)を銃撃して重症を負わせた事件を指しています。
二代目竹中組組長・竹中武は中野英雄(「義絶状」では哀川翔が演ってましたね)。
組織としての駆け引きは(武が一和会序列2位の副会長兼理事長・加茂田重政を電話1本で引退に追い込む下りを除いて)メインでは描かず、ひたすら山本広の首を刈ろうとする現場に焦点を合わせています。
マニラまで出向いて射撃訓練、ヘリ操縦訓練に精を出す安東組(劇中では安藤組)のメンバー。しかし、その裏では本家の終結宣言準備が着々と。
『向こうが謝りもせんのに、どないして喧嘩止めました言えるんでっか!? わしら明日から堅気になれ言わはるんでっか!?』
奴の首を獲るまでは終われない…。「ダラスの熱い日」「ジャッカルの日」を「西部警察」のノリで撮ろうとした、と言ったら褒めすぎですが、他の実録モノとは一味違う異色作です。
★山一抗争の始まりと終わりをこの3本で。
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★本日4月20日は小説家ブラム・ストーカー(1847~1912)の命日。
ドラキュラというアイコンを世に放った功労者。
「ドラキュラ」の版権がとれなかったために換骨奪胎作となった傑作と、そのまんま正攻法で撮って「う~む」な仕上がりになってしまった凡作の2本立てをどうぞ。