
『小さな街に行くといい。どこかまだ法秩序が残っている街へ。君はここでは生き残れない。君は狼じゃないからな。そしてここは狼の街なんだ』
You should move to a small town, somewhere the rule of law still exists.
You will not survive here. You are not a wolf, and this is a land of wolves now.
「ブレードランナー2049」と同じ監督とは思えません。全編から発せられる“圧”に心拍数あがりっぱなしです。
「ボーダーライン」
(2015年/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)
SWATを率いたFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)が敵のアジトを急襲するオープニングから緊張感MAX。
アジトには壁と言わず床と言わず夥しい量の死体が(FBIも思わずゲロッぱ)。

ここは麻薬戦争最前線…ではありません。
ケイトがスカウトされたメキシコの麻薬組織壊滅を目的とする特殊チームの現場こそ、麻薬戦争の最前線。
そこは国と国、善と悪、正義と犯罪、全ての境界線が曖昧なボーダーライン。

原題はSICARIO(スペイン語で殺し屋)ですが、良い邦題だと思います。
俯瞰(空撮、衛星)、ロング、広角、主観(暗視ゴーグル)を巧みに使い分けたカメラワークが秀逸。

特に俯瞰を挟む事によって全体の位置関係が把握できる構成が素晴らしい。チャカチャカと細かく繋いで誰と誰が何やっているのかも分からない「ボーンなんちゃら」の対極にある画面構成です。

主役はケイトですが、ふらりと画面に入り込んできて、最後には見せ場をさらう謎のコロンビア人アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が儲け役(終わってみればデル・トロの映画)。

「トラフィック」の時もそうでしたが、デル・トロは旗色不鮮明な役を演らせると巧いですねえ。
トランプがメキシコに壁を築きたがっている理由の一端が分かったような気がします。