カリガリ、マブゼ、モロー、レクター、メンゲレ…虚実を問わず博士(ドクター)と名のつくキャラにはロクな奴がおりませんが、ここにもう一人、謎の博士を追加しましょう。
メキシコ産の前衛怪奇を召し上がれ。
「ター博士の拷問地下牢」
(1972年/フアン・ロベス・マクテズマ監督)
フアンって人はアレハンドロ・ホドロフスキーとも親交が深かった人で、デロ・トロ監督が御執心(フアン監督作の北米版ソフトには軒並みデル・トロ監督の音声解説がついている)の監督さんだそうです。
舞台はフランス郊外。ジャーナリストのガストンが、高名な精神医メイヤール博士の診療所を尋ねるところから始まります。
しかし、入り口には面妖な制服を着て銃を構える衛兵が。
メイヤール博士は快くガストンを迎え、広大な敷地内にあるサファリパークのような治療施設をご紹介。
そこは狂人の闊歩する不思議空間。最後にダンジョンと呼ばれる地下牢施設を。
“拷問地下牢”なんてタイトルから、うぎゃー!どひゃー!なスプラッターを期待すると景気良く肩透かしを喰らいます。
おいおい、全然残酷じゃないぞ…ってちょっと待て。ここは“ター博士の”拷問地下牢じゃなかったのか?
『治療法の基礎はター博士とフェザー教授が…』
会話に出てくるだけかい!?
「ター博士の拷問地下牢」という邦題は、米国版公開タイトル「DR. TARR'S TORTURE DUNGEON」を直訳しただけで、オリジナルは「THE MANSION OF MADNESS」。
しかし、原作(と言うかインスパイア元)は、エドガー・アラン・ポーの「タール博士とフェザー教授の療法」。一応、韻は踏んでいるわけです。
「ター博士と~」の台詞がオリジナル(スペイン語版)に無い事から、米国版用の追撮もしくはオーバーダヴと看做されがちですが、本作は全て英語で撮影され、最後にメキシコの劇場用に編集&スペイン語吹替されたので、英語部分は全てオリジナル映像です。
お話自体は“病院スタッフと一部患者が入れ替わっている”という今となっては容易に想像がつく展開なのですが、色々前衛、あちこち意味不明なので、途中からストーリーとかどうでも良くなります(笑)。
狂人で世界征服みたいな誇大妄想が「恐怖奇形人間」と一脈通じているような。こちらの原作(と言うかインスパイア元)は江戸川乱歩。何となく奇縁を感じます。
WHDジャパン発売のDVDは地下ビデオ並みの低画質。字幕をざっくり覚えたら、ネットに転がっているフルムービーを観ましょう。100倍高画質です。
で、本作のリメイク…ではなくポーの原作をケイト・ベッキンセール主演で映像化した新作が「エリザ・グレイブス」(監督は「マシニスト」のブラッド・アンダーソン)。
写真下はそのティーザー・ポスター。
いきなりポスターでネタバレしています。
公開日その他不明。日本で公開されたら見比べてみるのも一興かと。
※多くの企業が本日仕事始め。会社のPCから覗いてくださっている皆様、明けましておめでとうございます。本年もよしなに。
※参考:「方輪・キチガイ・裏日本。 江戸川乱歩全集/恐怖奇形人間」 →2011年2月4日