デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

華麗なる凡庸。トータル・リコール[2012年版]

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都市やコロニー、廃墟の景観は悪くありません。

「またブレランかよ」なアジアンテイストも(ハングルが目障りなのを除けば)ディック原作というリスペクトの範疇という事で理解できます。

地球の中心部を貫通して裏側に17分でたどり着く“フォール”のアイデアもなかなか。

磁力によって高速道路の上下を浮遊疾走する車のビジュアルとスピード感も上出来でしょう。

大変良く出来ましたの判子をあげるに吝かではないのですが、何でしょう、この物足りなさは。

「トータルリコール」

(2012年/レン・ワイズマン監督)


シュワ×バーホーベンというどこを斬っても俺様汁が迸る前作と比べると、どこまでも普通、どこまでも優等生なリ・イマジネーションです。

眉毛男コリン・ファレルも、拳で語る悪妻ケイト・ベッキンセイルもそれなりに健闘。

普通にアクション映画として楽しむには十分及第点だと思います。

お手軽な権謀術策もアクションのスパイスだと思えば気になりません。

が、しかし…なのですよ。

“火星に行かない”“壮大な夢オチという要素が綺麗にカットされている”という表層的な違い以外に喰い足りない・物足りない何かが…。

やはり“毒が無い”って事なのかもしれません。

心(記憶の襞)に引っかかるもの(場面)がまるでないというのはジャンル映画としては致命傷。

せめて心を熱くさせる音楽のひとつも流れていれば(例えば「ロボコップ」とか「ランボー」のサントラと差し替えてみたら)、随分と印象が違ったと思うのですが。

最近は作家性のある監督が少なくなりましたね(ハリウッド的にはそんなもの邪魔なだけだし、小手先の器用な監督の方が使い勝手が良いのでしょうが)。

オリジナルのハチャメチャさの方が好みですね、私は。