
『俺たちは貧欲で高慢で、互いに殺しあっている。協力してフォードでも乗っ取りゃいいのに!』
役者の演技はできればじっくり落ち着いて観たい。あっちこっちにカメラを振ったり、位置関係も把握できないようなカット割りで細かく繋いだりせずに。
役者の(そして演出家の)腰が据われば、自然とカメラも座ってくる、そんな気がします。
「フューネラル/流血の街」
1930年代。ニューヨーク。
テンピオ一家の末弟・ジョニーが殺された。棺桶の中に眠るのはヴィンセント・ギャロ。
おいおい、いきなり死体かよ、ギャロ。
葬儀を仕切るのは長兄レイ(クリストファー・ウォーケン)。駆け付けた二男チェズ(クリス・ペン)は死体を前に激昂。
殺ったのは誰だ?! 対立する組織のボス、ガスパー(ベニチオ・デル・トロ)に決まっている。
ここから過去(直近および3兄弟の幼年期)の回想、葬儀の準備と犯人捜しが静かに進んでいきます。
マフィアものですが、激しいドンパチはありません。むしろ陰鬱。
組織の人間としての、兄としての苦悩。そんな人間の元に嫁いだ女たちの葛藤。
諦めと狂気がない交ぜになったクリストファー・ウォーケンが抜身の切れ味。
妻役のイザベラ・ロッセリーニが繊細な鈍器の佇まい(我ながら酷い例えだ)。
細面デル・トロ、太り過ぎクリスもいい感じ。コミュニストを気取るギャロの背伸び具合もいかにもな感じでハマっています。
アベル・フェラーラって私の中では“ニューヨーク派”と言うよりは“「ドリラー・キラー」の監督”というちょっと色物っぽい位置づけだったのですが、「バッド・ルーテナント」と本作を見て観方が変わりました。
この人、至極真っ当な監督さんです。