『みっちゃん、ごめんよ。俺がハートチップル持ってきたばっかりに』
『カルピスは…どこだぁ!?』
かつてこれほど固有の商品名が連呼された作品があったでしょうか(多分ある)。
突如ゾンビまみれとなった東京。薙ぎ倒す手段はただひとつ。
柔術。
東京都江戸川区。とある消火器工場では今日もつるっ禿ミツオ(哀川翔)とアフロヘアフジオ(浅野忠信)が柔術の訓練に勤しんでおりました。
窓の外には黒光りする山。
そこは粗大ごみはもとより、車、処理に困った死体、大きい声では言えない産業廃棄物などありとあらゆるゴミが持ち込まれ埋められ積み重なった縦に広がる夢の島。
人呼んで「黒富士」。
ある日、視察(と言うか憂さ晴らし)に来た本社の藤本をその場の勢いで撲殺してしまった二人は藤本担いで黒富士へ。
これで一件落着…と思いきや、黒富士では謎の産業廃棄物の影響で死体が次々ゾンビに。
藤本含むゾンビ集団が消火器工場にこんにちは(ここいら辺、実にしっかりと「ナイト・オブ・ザ・リビング・デット」を踏襲しております)。
柔術でゾンビを払いつつ、車で脱出。目指すは北…の先にあるロシア。
ロシアにはボクシングと柔術のエッセンスを汲み取った格闘技「サンボ」の猛者がわんさかいる(はず)。そこで揉まれて己の柔術に更なる磨きをかけるのだ。
が、しかし…。
前半のオフビートな展開はキャラも話もゆるゆるで頬ゆるみっぱなし。
何と言っても哀川&浅野がつるっ禿アフロを愉しんでいる感じが実に微笑ましく。
これが後半の東京壊滅後、要塞に籠った富裕層の気晴らしに開催される格闘家vsゾンビの見世物興行という「ランド・オブ・ザ・デッド」な展開になると途端にテンションダダ下がり。
哀川の途中退場によって二人の丁々発止が観られなくなるのも痛い。
原作がそうだから仕方ないのですが、映画としては絶対(途中拾ったヨウコを加えた)3人のロードムービーにすべきでした。
最後はもう北海道からサハリンに泳いで渡るとかでいいじゃないですか。
そうすれば「カオルちゃん最強伝説/ロシアより愛をこめて」の逆パターンになったのに。
何か色々惜しい。
佐藤佐吉は本作が本編デビュー作。
★何故かやたらと佐藤を買っている三池監督が佐藤名指しで脚本を書かせた(ある意味「黒富士」の原型があると言えなくもない)のが、
★佐藤が再び哀川と組んでメガホンを取ったのが、
★何となく近しいものを感じる竹内力の「青春」映画。