『謝れよ…トビー・フーパーに謝れよ!フーパーに謝れ。ロメロにもカーペンターにもデ・パルマにもフリードキンにも、フルチにもライミにもミラーにも、ダンテにもランディスにもスピルバーグにも深作にも中島貞夫にも野村芳太郎にも黒澤明にも謝ってくれ!』
『タランティーノはいいの?』
『あいつはいい!!』
首肯するところ大ではありますが、黒澤明とタランティーノは入れ替えた方がいいぞ。最大権威を否定せずして何がインディペンデントか。
同じ理由でスピルバーグもいらない。ここが石井輝夫になっていてミラーの代わりにアルジェント、ランディスの代わりにコスカレリが入っていれば100点でした。
「ゴーストマスター」(2019年/ヤング ポール監督)
※監督表記はallcinemaがヤングポール、Wikipediaがヤング・ポールでしたが、ここではエンドクレジットの表記に倣い「ヤング ポール」としました。
壁ドンでキュンキュンな偏差値貧乏ラブコメ「僕に今日、天使の君が舞い降りた」の撮影現場。
ロクな芝居もできないくせにいっちょ前の演劇論かます主演男優(人気があってスポンサーゴリ押し)が監督と衝突。
『壁ドンって何ですか!?』『キュンキュンって何ですか!?』『ちゃんと撮りましょうよ、映画を』
青いってのは罪だな。
挙句、ラストカット直前で現場放棄。現場の潤滑剤(八つ当たり人形とも言う)は名前だけ巨匠の助監督、黒沢明(三浦貴大)。
溢れる映画愛と迸るトビー・フーパー愛(とりわけ「スペースバンパイア」愛)といつか自身が監督する「ゴーストマスター」のシナリオを胸にひたすら耐え忍ぶ日々。
プロデューサー(手塚とおる)は黒沢をテキトーにおだてて、監督やらせてやるとか言っていますが、勿論そんな気は毛頭なく。
『僕、1本も観てないんですよね、トビー・フーパー(笑)。全然知らなくて歌手かと思って。そしたらそれシンディ・ローパーで。あ、シンディ・ローパー映画撮ってんだって(爆笑)。彼、映画撮れると思います?』
他にも芽の出ない二世女優(成海璃子)に才能の無さを指摘されたりと、あれやこれや心折られて精神が複雑骨折した黒沢の未練やら怨念やら執念やらが「ゴーストマスター」のシナリオに乗り移って…。
シナリオが死者の書に!
ゴアシーンとか頑張っているのですが、上手くいっている所と「なんじゃそりゃそりゃ」な所の落差が激しいのが難。
壁ドンはなかなかでしたが、手塚のこれ👇は…。
修羅場と化した現実が「僕に今日、天使の君が舞い降りた」の台詞をトレスしていくあたり、細かく気を遣った脚本なのですが、シナリオに憑依する悪霊(?)の正体とか曖昧で行動の目的とか原因とかが今ひとつ(黒沢の鬱屈の具現化では弱い)。
1回綺麗に終わっているのに延長戦的に話を続ける終盤は完全に蛇足。
「スペースバンパイア」をやりたい気持ちは分かるのですが…。
第40回ポルト国際映画祭最優秀作品賞を受賞。映画好きの気持ちが先走って空回り感が半端無い(でも憎めない)手作りホラーでした。
タイトル画像ボツ案。
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★本日3月24日はタランティーノも大好き梶芽衣子(1947~)の誕生日(おめでとうございます!)。
姫もさそりも良いですが、本日は修羅雪さそり襲名以前のこの作品を。