デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

歓喜のヒストリー・オブ・バイオレンス。 Mr.ノーボディ

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『神はひとつの扉を閉じる時、別の扉を開くと言う。お願いだ神よ、扉を開けてくれ』

They say God doesn't close one door without opening another. Please God, open that door.

俺の名はハッチ・マンセル。どこにでもいる誰でもない男。NOBODYだ。

判で押した毎日を繰り返し、ゴミ出しに間に合わなかった事を妻に責められ、息子からは尊敬されず、夫らしい事もしてやれず父親らしい姿も見せられず、ただ毎日を漫然と…。

全て俺が望んだことだ。この平凡を手に入れるためにどれほどの苦労をしたか。

だがもういい。終わりだ。

まずは今バスに乗り込んできたこのゴロツキどもをぶちのめす。

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病院食が奴らの口に合う事を祈るよ。

「Mr.ノーボディ」(2021年/イリヤ・ナイシュラー監督)

ジョン・ウィックの流麗さとは程遠い、武骨で不器用ながら迷いのない攻撃で街のチンピラをボロ雑巾にしたひとりの男。

何者なんだハッチ・マンセル!?

ある退役軍人は、ハッチの手首にあるカードのタトゥー(スペードの7とダイヤの2)を見てドアを厳重に施錠。死神と関わるのは御免だと言わんばかりに。

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因みに♠の7との2は、テキサスホールデム(ポーカーの一種。アメリカのカジノでは最もポピュラーなゲーム…らしい)で配られる手札の中で統計的に最悪のものだそうです。つまり、この2枚のカードが配られたらまず勝ち目はない。即フォールドしろという。

衝動の頸木を外したハッチですが、ぶち転がしたチンピラの中にロシアンマフィアの権力者の弟(病院で死亡)がおりました(どこかで聞いた話ですが、脚本は「ジョン・ウィック」シリーズのデレク・コルスタッドです)。

これ以上はネタバレになるのでお話の方はこの辺で。

本作、音楽の当て込み具合が妙にツボ。

冒頭で「悲しき願い」(アニマルズではなく、サンタ・エスメラルダでもなく、勿論尾藤イサオでもない、ニーナ・シモンのオリジナルバージョン)が流れた瞬間「これはいける」。

他にもパット・ベネターの「HEARTBRAKER」、アンディ・ウィリアムスの「THE IMPOSSIBLE DREAM」、ルイ・アームストロングの「WHAT A WONDERFUL WORLD」などベッタベタな選曲が実に心地良く被さってきます。

特別ゲストとして老人ホームで暮らすハッチの父親役でクリストファー・ロイドが。

『俺も…引退しようと頑張った。実際楽しんだよ。朝寝坊して朝食、中庭の散歩、昼飯喰ったら昼寝、水泳…だが忌々しいことに…こいつが忘れられんのだ!』

クライマックスは父子で「ひゃっは~!」な弾幕のカーテンコール。

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過去に縛られるのではなく、過去を現在に解き放つ歓喜ヒストリー・オブ・バイオレンス

ランボー ラスト・ブラッド」の100倍のカタルシスをお約束します。

 

★ご参考

そう言えば「サントラ百人一首」の1発目はこれでしたね。

 

 

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我々世代にとってこの人はやはりジェット・リーではなく…