『たまたま通りかかった時に君が盛り塩なんかするから。あれはね、外からも入って来れないけど、中からも出られなくなっちゃうの。考えて使った方がいいよ』
諭す幽霊、聞く探偵、横では気絶している不動産営業マン。
この絵柄は何だ(笑)。
「怪奇物件探偵X」(2021年/宮岡太郎監督)
埼玉県雙子原市(ふたごはらし←架空の街)。奨学金返済のため、地元で最初に内定をくれた神岡探偵事務所に就職したもののうだつのあがらない日々を送る光永稔(久津仁愛)。
所長から「最後のチャンス(解決できなければクビ)」とあてがわれた仕事は不動産屋のお手伝い。
待っていたのは雙子原不動産の営業マン、並木真理央(TAKA)。
並木が抱えているのは「心理的瑕疵物件」。
心理的瑕疵物件とは、暴力団事務所や風俗街、カルト教団の集会所などに隣接している、といった「住むにはちょっと気になる所がある」物件。
しかし、今回の依頼案件は何度入居者が変わっても短期間で逃げ出してしまう正真正銘の「事故物件」。
面白いのは、告知義務をなくすルーム・ロンダリングではなく、問題そのものの解決を希望していること。
相手が霊なら祓って諭して成仏させて、次の入居者が安心して住める状態にする…ってどー考えても探偵の仕事じゃありませんが、すべては奨学金返済のため。
連れて来られたのは8年前に入居者が室内で自殺している雙子原ハイツ105号室。
やがてその自殺者と思しき女性が現れますが、実はこの部屋にはもうひとり住人、いや来訪者が。
押し入れから出てきたのは記憶をなくした浮遊霊の男(小坂涼太郎)。
なぜ自分が死んだのか(胸に刺し傷があるので多分殺された)、生前何をしていたのか、名前すらも思い出せず、ふらふらしてこのアパートに立ち寄ったら、光永が盛り塩とかしたもんだから、部屋から出られなくなった…らしい。
事故物件で幽霊のアドバイザー。心強い気がしなくもないですが、にしても名前がないのはちと不便。
『じゃあ、とりあえず…O次郎で』
『O次郎?』
『オバケだし』
『Q太郎じゃなく?』
現れた女の霊はO次郎が「あなた生前ホストだったんじゃないですか?」な包容力で摂受(しょうじゅ)。
無事、女性は成仏して依頼達成…となりましたが…。
死後ここまで明確に自分を認識してくれた人に出会ったことがなかったO次郎は「自分の死の真相が分かるまで」一緒にいてほしい、と光永に懇願。
そして並木は今回の事件解決で「心理的瑕疵物件対策本部長」に昇進。
『凄くないですか!? 本部長ですよ、本部長』
『これって押し付けられただけなんじゃ…』
『引き続きお願いします!うちの会社、事故物件わんさかあるんで』
『『なんでだよ!』』
ここに、奨学金返済のためなら何でもやる霊感ちょいありな探偵と、事故物件まとめて押し付けられた不動産屋営業マンと、自分の死の真相を知りたい(そして成仏したい)浮遊霊と言う「事故物件対策トリオ」が誕生しました。
軽くビビらす演出もありますが、基本、3人のやりとりとリアクションで魅せる軽妙路線。
次の物件👆では「泣かせ」も入れて人情路線まで。
これは新しいタイプの事故物件モノなのではないでしょうか。
★ご参考~伝統的事故物件モノ
★あの頃は名称がなかったですが、「呪怨」の佐伯邸も事故物件ですよね。
★本日10月30日は新選組筆頭局長・芹沢鴨(1827~1863)の命日。つまり、暗殺された日。
1863年のこの日(文久3年9月18日←16日説もあり)、新撰組副長助勤・平山五郎と共に芹沢鴨が殺害されました。
新選組を扱ったドラマに置いて、芹沢は「如何に近藤勇を魅力的に描けるか」の試金石となる超重要キャラ。
「新選組」(1969年)の三國連太郎も素晴らしかったですが、今回はVシネオールスターズが撮り上げたこちらを(芹沢は白竜)。
★そして本日はジャッキー佐藤と神取忍、運命の二人のダブル誕生日(神取さん、おめでとうございます!)。
昨年もご紹介しましたが、偶然にしては出来過ぎなので今年もこの一戦を。