『おかげで俺も死んだ弟のそばに行ってやれそうだ。さぞ喜ぶだろうな』
『女はどうした?』
『狭間にもらった金やって別れた。惚れっぽいのが俺の悪い癖だ。野郎に惚れたのは初めてだがな』
『すまねえ』
汗なんかかかないぜ、な小林旭といつも汗だく宍戸錠。どっちも違う意味で滴っています。
「縄張はもらった」(1968年/長谷部安春監督)
縄張のルビは文献によって「シマ」だったり「しま」だったりするのですが、本編やポスター、DVDジャケが「シマ」になっているので「シマ」を正解とします。
組を守るために体を張って8年のお勤めをしてきた一文字組代貸・寒河江(さがえ)次郎(小林旭)。
しかし、一文字組は新興の狭間組(業界通り名は“殺しの狭間”)に縄張を奪われ、更に病弱な組長が狭間組の世話になっているという「仕返しもできない」状況。
狭間組に挨拶に行ったら逆に出された仕事の提案。
それは新興工業地帯の土地買い占め問題で対立している青葉組と遠野一家を叩いて漁夫の利を得ようと言うもの。
狭間組の名前が表に出るのはマズイ。集められたメンバーは役者崩れ(川地民夫)、イカサマ賭博師(藤竜也)、売れそこなったシンガー二人(郷 鍈治、大浜詩郎)。
そこに出所早々、寒河江の命を狙ってきた(寒河江が殺めた男の兄)日野(宍戸錠)と寒河江の舎弟のジョージ(岡崎二郎)、そして狭間組の監視役・箱崎(二谷英明)を加えた総勢8名がチーム寒河江に。
作戦は青葉組と遠野一家を噛み合わせて自滅させるという単純なものですが、役者の面子が良いので飽きません。
一応、小林、宍戸に二谷を加えた3枚看板がウリのようですが、二谷はあまり出番無し。むしろ美味しかったのは藤竜也。
流れ者を装って遠野一家に入り込もうとするのですが、ここで古式ゆかしい仁義を切るのがちょっとした見せ場。
『お控えなすって』
『お控えなすって』
この掛け合いを2回リピート。
『ご仁義になりませんから是非お控えなさい』
『お言葉でございますから、控えさせて頂きます』
『かように無様で失礼でござんすが、お控えなさい。手前、親を持ちません風来坊で住所不定です』
本論に入るまでが長い。このどっちが先に控える(引いて相手に挨拶の権利を譲る)か、が仁義の攻防で場合によっては「お控えなすって」が延々繰り返される事もあるそうで。
こういう伝統芸がワンカットの長回しで観られるのはちょっと得した気分です(所作指導:笛田直一)。
工場建設予定地の所有者はお百姓さん。建設反対派(つまり土地売らない派)のリーダーの娘に太田雅子(後の梶芽衣子)。
青葉組の嫌がらせに遭い車中で乱暴(レイプではない)されますが、この時にしっかりおっぱいが見えています。
推定21歳。二礼二拍手一礼!
このシーンに限らず、本作無駄に裸が多くでてきます。この👇緊縛カットとかお話に全く関係ないのに気合の入った縛りを魅せてくれます(縄師のクレジットは無し)。
脚本は石松愛弘(いしまつよしひろ)※久保田圭司と共同。
映画だと増村保造と共同執筆した「ある殺し屋」、TVだと「特捜最前線」「太陽にほえろ」「非情のライセンス」など。
特に「非情のライセンス/第3シリーズ第2話・兇悪の素顔・あなたと死にたい!」は快作です(この回の演出は義兄の池広一夫)。
捨て石の 玉突き連鎖 弾き弾かれ欺かれ。
弾くと言えば、梶芽衣子を襲った凶弾。銃声は2発でしたが手術で取り出された弾丸は17弾以上。
その後の映像で使われたのが散弾銃であったと分かります。カメラが再び銃撃現場に戻ると壁に細かい穴がいくつも。
散弾で撃たれるとどうなるのか、を映像で示した珍しい例ではないでしょうか(聞いてるか、大門部長刑事)。
最後に旭と錠の素敵な会話を。
『こんな汚えやくざ、いるとは思わなかったぜ』
『間違えちゃいけねえ。汚えことするのがやくざってもんだ』
仰る通りでございます。
★同じ年に公開された日活映画。共通点は藤竜也の非業の死。
★石松愛弘脚本によるTVサイズに収まりきらないサスペンス巨編。
★小林旭を堪能したければ…
★宍戸錠を堪能したければ…
★散弾の間違った使い方
☜ランキング投票です。一度散弾を撃ってみたいという方はワンポチを。
★本日3月17日はロックンローラー内田裕也(1939~2019)の命日。
追悼記事を再掲させて頂きます。