『何もかも…本当に何もかも失ってしまった人間ってものを考えることができるかい? 家も故郷も目的も…名前も』
『冗談言っちゃいけねえお前、名前のねぇ奴なんかなぁ、この中にお前…』
『そいつがいるんだ。俺さ。戦争中、秘密任務に就かされたため、戸籍を消されてしまったんだ。戦争が終わった途端に、俺にはもう何もなくなってしまった』
自身のアイデンティティを示す最小単位「名前」すら失ってしまった男。
『ヒロ…組長殺しの手引きをしたのもてめえか?』
『違う…違う! 俺の名前は広川じゃない。姜(カン)という三国人だ!』
捨てたはずの名前に追いかけられ、追いつめられてしまった男。
骨格だけ見れば《ふらりと現れた風来坊が、揉め事に巻き込まれ、鉄槌振るって去ってゆく》いつものアウトロー英雄譚ですが、捻りの効いた人物像がお話に厚みを持たせています。
戦争に加わったわけでも、況(いわん)や勝ったわけでもないのに「勝戦国」を名乗る“当事者国以外の国籍の人”「三国人(≒朝鮮人)」が我が物顔で傍若無人の限りを尽くしている終戦直後の東京。
青空市場でぎりぎりの生活をしている8万人を超える露天商。彼らを守るのが的屋の仕事ですが、MPは勿論、警察も三国人の味方で手出しができず。
老舗の的屋「平松組」の組長・平松大三は、露天商の安定的商売基盤を確保するため、大規模なマーケットの建設に着手。
三国人のリーダー格・李(小池朝雄)に殺された娼婦・萩原トキ子の弟・健太郎(渡哲也)が復員してマーケット建設に一肌脱ぎますが…。
小池朝雄の三国人役は板につき過ぎて最早第二の顔。日本人(的屋/警察)は勿論、ボスに対しても不遜強引。娼婦抱いたら金払わず射殺。目撃者も殺して「自殺」と言い張る。正しい悪役の見本です(本来、的屋側にいるべき「広島死闘篇」の千葉真一が越境している感じ)。
クライマックスは200人の三国人withダイナマイトvs重武装的屋の市街戦。
マイト弾け、手榴弾飛び交い、機関砲灼熱の戦いは正に市街戦。看板に偽り無し。
東映実録路線と比べるとにっかつならではのメロドラマ風演技と演出がちぃっと辛気臭いですが、最後の市街戦でチャラです。
二枚看板の宍戸錠は今ひとつ見せ場がありませんでしたが、己の出自に苦悩する(日本人になろうとした)三国人・姜(カン)役の藤竜也が印象的でした。
大陸で互いのタマ狙い合った工作員(スナイパー)役でロン毛の米倉斉加年が!
★西村昭五郎監督には別ジャンルで大変お世話になりました。
1947年の今日、ロズウェル陸軍飛行場が「ロズウェル付近の牧場で空飛ぶ円盤を回収した」と発表しました。
以来、UFO信者の聖地となったロズウェルの様子を知りたい方はこちらを。
★本日のTV放送【19:00~BS12/土曜洋画劇場】
※放送は「魔宮の伝説」ですが、2020.06.09(BS朝日)、2020.12.31(同)、2021.09.24(日本テレビ)、2022.01.23(BS日テレ)、2023・05・26(日本テレビ)と相変わらずのヘヴィロテでございます(各局の持ち回りバトンリレー状態)。