『君は神原と言わないか?』
『何だい、神原だったら許してくれるとでも言うのかい?』
『君のお母さんの名前はユキさん…ユキさんとか言わないか?』
『そうだよ』
警視庁捜査1課の部長刑事、作間忠男(山本昌平)が踏み込んだ若者のたまり場(所謂ヤリ部屋)。
そのリーダー格の若者、神原吉夫(野上正義)は、作間と同郷の「黒い系譜」を持つ男でした。
「日本暴行暗黒史 異常者の血」(1967年/若松孝二監督)
長年に渡って目を背けてきた故郷に戻る決意をした作間。
横たわっているのは血と殺人と狂気が織りなす歴史。
始まりは明治時代。長州藩。
百姓でありながら剣の腕が立つという理由から馬屋番にとりたてられた真田源七(野上正義)に対する理不尽な扱い。
堪忍袋の緒が切れた源七は、第2騎兵隊のリーダーを叩っ斬って、妻を凌辱(直後入水自殺)。
返す刀で隊長・神原をシバキ挙げて眼前で妻を強淫(後、発狂)。
その後、源七は添い遂げる事が叶わなかった婚約者と契って心中。
しかし、源七の血は絶えず。隊長の妻が源七の子供を懐妊(母体は出産時に死亡)。
生まれた子供、与一は神原家の跡取りに。しかし…。
明治、大正、昭和と続く黒い系譜のバトンリレー。
脚本は出口出名義になっておりますが、足立正生です。
71年にカンヌ映画祭の帰路、本作監督である若松孝二とパレスチナに渡り、日本赤軍並びにPFLPのゲリラ隊に参加。74年以降は、重信房子率いる日本赤軍に合流し国際指名手配となった足立正生。
途中挿入される「労農運動」の描写とか(その布教者と言うかアジテーターがロクでもねぇ奴だと言う事も含めて)足立っぽさを感じます。
姦淫と殺人と発狂と近親相姦を繰り返しつつ現代(1967年)へ。
黒い系譜を受け継いだ者の決断とは。
75分に凝縮された血の恩讐。全てが血のせいとは思えませんし、科学的根拠は彼岸の彼方だとは思いますが、ゴリ押しの説得力を持たせてしまう所が足立&若松の凄いところです。
★足立正生についてもちっと詳しく知りたい人はこちら。
★若松孝二の作品に興味のある方はこちらをどうぞ。
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