デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【地獄の墓掘人が墓穴へ】追悼:ローラン・ボック【1978年シュツットガルトの惨劇】

時にプロレスのお約束を無視したファイトスタイルから「地獄の墓掘人」と呼ばれたローラン・ボックがお亡くなりになりました。

12月19日。81歳没(正確な日付、死因は不明)。

当時無名だったボックに「最強伝説」をもたらしたのは1978年11月25日の対アントニオ猪木戦。所謂シュツットガルトの惨劇」です。

ボックがプロモーターとして興行を仕切ったアントニオ猪木の欧州遠征シリーズ。猪木に提示されたファイトマネーは全11戦で750万シリング(約5千万円)。アリ戦で10億近い負債を背負った猪木は喰いつきましたが、これが飛んだ一杯喰わせモノ企画。

西ドイツだけかと思ったら、全6か国行脚の23日20試合(+1エキシビジョン)。国境を跨ぐ(時差がある)関係で1日2試合強行消化の日が2回も。

更にリングは「板におが屑を敷き詰めてマットを被せた程度(同行した藤原喜明談)」の安普請。ボディスラムが必殺技です。

ルールも「4分×10のラウンド制」「ダウンした相手への攻撃禁止」などプロレスラーにとっては鬼仕様。

極めつけがツァー参加メンバー。柔道家あがり、ボクサー崩れ、アマレス経験しか無いなんちゃってプロレスラーなどなど。

自分の強さをアピールする事しか知らない自己顕示欲のお煮しめ。魅せるプロレスなど知らないどころか思いつきもしない奴らばかり。

掛け値なしの満身創痍で迎えたボックとの決戦(ツアー中3戦目)。


日本では年末の「ワールドプロレスリング」で放送。実況は若き日の古館。テレビ用の照明とか入っていないので、色合いが「地下プロレス」。後の第一次UWFを思わせる殺伐さ。

古館、ボックのこと「ローラン・ボック」って言ってますね。私も長い事ローラン「ド」ボックだと思っておりました。

このツアー「モハメッド・アリと戦った男」猪木を担ぎ出して来たものの、興行的には大惨敗で、プロモーターとしてボックはかなりの借財を積み上げてしまったようです(ボックが関わっていた興行会社倒産しちゃうし)。

金になると踏んだのに!ガッデム猪木!と思ったかどうかは分かりませんが、ボックは板の間リングで猪木を掴んでは投げ掴んでは投げ(アマレス出身なのでスープレックスは得意)。

この問答無用な戦い模様が「ボック最強伝説」を生んだわけですが、猪木は決して手も足も出なかったわけではありません。

豪快に投げられながらも、しっかりボックの腕極めてますし。


結果は10ラウンドフルタイム戦って判定。地元民による採点なので当然3-0でボックの勝ち。

試合中に観客が歌っていた「ボックを讃える歌」(いや正式タイトルとか存じませんが)が異様でした。

謹んで哀悼を。

 

★猪木のアリ戦その他の異種格闘技戦についてはこちらを。

 

 

 

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