
「私は疲れ果ててしまった。人の不幸を見るのも。神に従うのも」
原題“疲れ果てた死神(The Weary Death)”。その死神に恋人を奪われた女。
蝋燭が立ち並ぶあの世とこの世の狭間で死神は女の「愛」を試す。
「この蝋燭は人の命だ。ここに消え入りそうな炎が3つある。このうち一つでもお前が救うことができたら、恋人の命を返してやろう」
女は、バグダッド、17世紀のベネチア、古代の中国を旅し、死の運命に立ち向かう。
「死神の谷」(1921年/フリッツ・ラング監督)
「ドイツ表現主義」なるものが、どんなものかは知りません。ただ、モノクロ・サイレントの映像がひたすら哀しく美しく・・・。
まだ長い蝋燭の炎が消えると死神の腕に赤ん坊が。現世では赤ん坊の遺体に泣き伏す母の姿。哀しげな死神の表情、そして冒頭の台詞。
セットの壮大さ、特撮の素晴らしさも含めて、とても87年前の作品とは・・。
フリッツ・ラング恐るべしです。