監督名伏せられたら「寺山修二?」と思うかもしれません(褒めすぎか?)。前衛の拾い物。
「狼の紋章」(1973年/松本正志監督)
不良の巣窟「博徳学園」に転校してきた謎の少年(実は狼族の末裔)、犬神明(志垣太郎)。
志垣太郎で引いてはいけません(笑)。
36年前の志垣くんはスリムなクール・ビューティで、犬神明のイメージに近いです(いや、やっぱちょっと暑苦しいか)。
対するは、広域暴力団幹部の息子・羽黒獰(松田優作←デビュー作)。
“白い詰襟着て日本刀を振り回す資産家の御曹司”というキャラクターは「うる星やつら」の面堂終太郎に引き継がれています(本当か?!)。
意外な事に、平井和正の原作にかなり忠実・・にもかかわらず映像表現が素敵過ぎて気分は前衛。さらに、杉田二郎が歌う主題歌と挿入歌がアングラの誉れを上塗り。
犬神明のマンションのドア開けたら中が大草原というシーンもグッときますが、何と言っても白眉はクライマックス。
狼の剥製と犬の実景を織り交ぜながら、ヤクザが勝手に自滅していく所は、トマトが転がってる横で人間が「ぎゃあー」と倒れる“あの映画”を思わせてナイスです。
惜しむらくは変身後の狼の造型。まだ「ハウリング」まで8年あるとは言え、あのあからさまな被り物はないよなぁ。
アダルトウルフガイ・シリーズの犬神明と同一人物であるフリーのルポライター・神明(黒沢年男)も登場。確かに“ジャン・ポール・ベルモンドを漫画にしたような” 顔に近いかもしれません。
何十年かぶりに黄ばみまくった文庫本引っ張り出しました。うん、いい話です。平井節爆発。原作読む時は、「狼女リツコ」→「悪徳学園」→「狼の紋章」→「狼男だよ」の順で。