デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ゾンビーハンター/死霊狩り。 平井和正と狼男の思ひ出

「おれには、まだしなければならぬ地上の仕事が山ほどあるのだ。

 こんなアンハッピーエンドで締めくくられてたまるものか。

 まったく冗談じゃないよ。

 だが、おれはまだ死なないのだ。

 かならず、またお目にかかろう」(「狼男だよ」より)

 

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19日にお知らせしたように、作家・平井和正氏がお亡くなりになりました。

初めて平井氏の文体に接したのは小学4年の頃。ハヤカワ文庫版「狼男だよ」

ジャン=ポール・ベルモンドを漫画にしたような”フリーのルポライター犬神明にすっかり魅せられてしまった訳ですが、実は出会いはもっと前。

6311月、TBSで始まった原作:平井和正、絵:桑田次郎(現:二郎)によるアニメエイトマン(連載タイトルは「8マン」)が最初。

漫画の方は桑田氏がちょいとやらかしてしまったために65年打ち切り。

未完に終わった「8マン」に対する鎮魂歌として書き上げた「サイボーグ・ブルース」SFマガジンに連載されたのが68-69年。

そして69年に立風書房から“大改竄版”「狼男だよ」発刊。同時に「ぼくらマガジン」誌上にてデスハンター連載開始(原作:平井和正、絵:桑田次郎)。

人間に寄生して凶暴な化け物に変えてしまう“デス”を殲滅するために組織された特殊部隊“デスハンター”。

過酷な選別と生存試験。片目・片腕を失いながら、デスハンターの一員となった田村俊夫は愛する者を次々失い、やがてあらゆる感情を捨て去った殺人機械に。

少年誌ゆえエロは無いものの、かつての同胞の手に落ちた仲間リュシールが拷問で顔の皮を剥ぎとられるという凄惨シーンがあり、ちょっとしたトラウマ。

この漫画原作を小説の形にしたのが、「ゾンビーハンター/死霊狩り」三部作。

最も好きな平井作品です。

全てをなくした男が愛によって再生していく、ベタでハードでクールな傑作だと思います。

“愛はしばしば、奇蹟を生む”(「転生」より)

こんなフレーズ使ってブッ飛ばされないのは文壇広しと言えど平井和正ただ独りでしょう。

改めてご冥福をお祈りいたします。


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