嗚呼、ミッキー・ロークだ。
40を過ぎたポール・ダンサー、マリサ・トメイと楽しそうに80年代パーティ・ロックを語るミッキー・ロークが一瞬“あの頃”の顔になる。
確かにこいつはミッキー・ロークだ。
「レスラー」(2008年/ダーレン・アロノフスキー監督)
リングを見上げて泣いたのはいつ以来だろう?
ハンセンが鎖を天に突き上げて「ブロディ!」と叫んだ時か?
アニマル浜口が、マットを指差して「この四角いリングの中に僕の青春がありました。人生があったんですよ。ありがとうプロレス。さようならプロレス」と言った時か。
この映画を観ると「ロッキー(ザ・ファイナル)」がいかに恵まれていたか分かります。
ロッキーには、支えてくれる人も見守ってくれる人も待っていてくれる人もいましたが、ランディ(ミッキー・ローク)には誰もいません。
激闘と薬でボロボロになった体、いつ止まるか分からない心臓、取り戻せなかった家族の絆・・。
「俺にとって痛いのは外の現実の方だ。リングだけが俺の居場所なんだ!」
控え室で血まみれになりながら互いの健闘を湛える姿、「これを凶器に使ってくれ!」と自らの義足を差し出す観客、何もかもが素晴らしい。
復帰を決意する時の曲がACCEPTの“Ball To The Wall”だったのは個人的にツボでした。
ラストカットの神々しさは「リトル・ダンサー」を凌ぎます。