デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ダニー・リーに酔う。 漆黒[ノワール]

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謎の男ダニー・リー。

ある時は悪を許さぬ熱血刑事、ある時は殺し屋チョウ・ユンファを助ける男気刑事。

北京原人を探しに行ったかと思えば、「香港人肉厨房」「幼女丸焼き事件」「八仙飯店之人肉饅頭」など鬼畜系にも精通し、意味も無く金髪女をはべらせている謎の男。

そんな底の見えない男の初監督作品。どんな“俺様”映画になっているのかと思いきや…

誠実一直線な刑事ドラマでした。

「漆黒[ノワール]」(1984年/ダニー・リー監督)

タイトルだけ見ると、香港マフィア幹部と一匹狼の刑事の友情と裏切りと銃撃戦って感じですが、原題は「公僕」。

殺人課に配属された新人刑事キイと指南役の先輩刑事ビー(ダニー・リー)。二人を中心に刑事の日常が淡々と描かれる“刑事物語”です。

ダニー・リーは出しゃばらず、刑事をヒーロー然と描く事もせず、過剰なセンチメンタリズムも封印して、細かいエピソードを積み重ねながらキイとビーの友情を深めていきます。

しかし、ここは香港。生活する人間のバイタリティたるや半端じゃありません。

幼女に暴行しようとした青年とか住民総出でボコろうとしますし(結局、制止に入ったビーが事情を聞いて青年をボコボコにする)、チンピラも大衆も熱い熱い。

後半、犯人追跡中に悲しい事件が起こり、一気にそれまでの日常が瓦解してしまいますが、必要以上に暗くならないのは、この香港の熱気のせいかもしれません。

香港電影金像奨主演男優賞/台湾金馬奨主演男優賞受賞。日本未公開。VHS廃盤。未DVD化。ダニー・リーの日本での知名度そのままの冷遇。勿体無い。

※参考:「八仙飯店之人肉饅頭」→2009年2月9日
    「北京原人の逆襲」→2010年4月13日