毎度の事ながら原作原理主義者からは太鼓の乱れ打ちの如きタコ殴りの雨あられですが、いい感じのオムニバスだと思います。
皆さんご存知の事だとは思いますが、一応解説。
NECRONOMICON(普通は「~ノミカン」ではなく「~ノミコン」と表記)とは、紀元730年にアラブの狂える詩人アブドゥル・アルハザードによって記された禁断の魔術書。
当初のタイトルは「キタブ・アル・アジフ」でしたが、950年にギリシャ語翻訳版が出た際に「死霊秘法(ネクロノミコン)」と改題。
現存するものの多くは17世紀のラテン語版ですが、いずれも欠損箇所があり30章全ての記述が揃った完本は存在しない。
…という設定の“架空の本”で、クトゥルー神話の最重要小道具です。
(「死霊のはらわた」の“死者の書”もNECRONOMICONの派生系)
この本をクトゥルー神話の産みの親、H.P.ラヴクラフトが、とある寺院の図書館で発見し・・というプロローグ(&エピローグ)の合間に彼原作の短編が挟まれます。
まずはラヴクラフトを演じるジェフリー・コムズにびっくり。そっくりなんですよ、ラヴクラフトに。丸顔のコムズが特殊メイクで超面長。言われないと分かりません。
で、肝心の本編3話ですが、確かに原作愛読者は「はあ?」かもしれません。
伊藤和則脚本・金子修介監督の第2話(原作は「冷気」)は、まあ、こんな感じだったかな、と思えますが、クリストフ・ガンズ監督(「サイレントヒル」)の第1話(原作は「壁の中の鼠」)とブライアン・ユズナ監督の第3話(原作は「闇に囁くもの」)は、ええっと、どこが?
あそこが違うここが違うというレベルじゃなくて、もはやかすりもしない完全別物。
ただ、ラヴクラフトっぽいイメージはキープしていて、原作を離れた怪奇伝奇オムニバスとして観ればなかなかに楽しめる出来になっていると思います。
★ご参考