ラヴクラフト映画としては上位の出来と密かに評価しているスチュアート・ゴードン監督の「DAGON」が国内初BD化。
それまではVHSオンリーだったので、快挙と言って良いでしょう。
VHSケースを模したアウターには筋違えるかと思うくらい首を傾げましたが…。
何故VHS⁉
「ビデオドローム」の北米版BDはインナーがビデオテープ（ちゃんとβになっている）デザインでしたが、これはビデオテープが重要な小道具になっていたから。
「DAGON」のどこを探してもVHSなんか出てきません。デザイナーを居酒屋に呼びつけて小一時間問い詰めてやりたい気分です。
画像は流石BDで、テープでは捉えきれなかった廃屋背後の人皮とか鮮明で、結構「悪魔のいけにえ」テイストも入っていたんだなぁと新たな発見。
本作、2001年の製作ですが、企画が最初に立ち上がったのはその15年前。「死霊のしたたり」の直後。「死霊のしたたり」の続編という位置づけだったようです。
その時に問題なく製作されていれば、主演はジェフリー・コムズとバーバラ・クランプトンだったでしょう（つい忘れてしまいがちですが、「死霊のしたたり」もラヴクラフト原作）。
その企画が流れて、時も流れて、再始動となったのはミレニアムも超えてから。
タイトルは「ダゴン」ですが、原作は「インスマスを覆う影」（ブライアン・ユズナが「そんなタイトルじゃ客が来ねぇ」と言ってDAGONにしたそうです）。
1927年のニューイングランド地方を舞台にしたこのお話を、あろうことか現代のスペインにデリバリー。
ラヴクラフトファンが聞いたら卒倒しそうな大鉈振るう設定変更をしておきながら、尚、本作がラヴクラフトらしさを失わないのは、ひとえにロケ地となったスペインの漁村が「正にインスマス！（劇中呼称はインボッカ）」な佇まいを宿していたからでしょう。
英語が通じない異国、というのも不安を煽る要素として機能していました。
「DAGON」を観た後、原典を再度確認したいなぁと思っていたら、本屋で最新コミカライズ（ご丁寧なことに２巻組）を発見。
しかも作者は”本格派”田辺剛。タイトルは「インスマスの影」。
実は「インスマスを覆う影」は2010年にPHP研究所から「インスマウスの影」のタイトルでコミカライズが発売されています（作者は原田雅史）。ただ、絵が…。
PHP研究所は他にもいくつかのラヴクラフト作品をコミカライズしているのですが、おしなべて絵が稚拙。PHPはラヴクラフトを若手の登竜門とでも思っているのか、というくらい雰囲気を破壊しています。
ちょっと見比べてみましょうか。
右が原田雅史による「インスマウスの影」の冒頭部分。左が田辺画伯による「インスマスの影」の冒頭部分。
画力と気迫と愛情が違います。
原作・映画を思い出しつつ読み進めていくと、ゴードンのDAGONが思いの外、原典のディテールを拾っていることに驚き。何だちゃんとインスマスしてたんじゃないの。
にしても何故こんなにこのお話は人々を惹き付けるんでしょうねえ…。
★ご参考
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★偶然（？）にも本日７月4日は、オーガスト・ダーレス（1909～1971）の命日。
ラヴクラフトの残した作品群を『クトゥルフ神話』として体系化した≪もうひとりの産みの親≫。
自身の作品の中にも「エイベル・キーンの書置／インスマスの追跡」「インスマスの彫像」といったインスマス関連作があります。
ダーレスと言えばハスター、ハスターと言えば…
※書いてから気づきましたが、去年も全く同じネタを使っていました（Oh My…）。
★（気を取り直して）本日７月4日は俳優・木村功（1923～1981）の命日（合掌）。
どこか病んだ相貌が役柄に重みと深みを上塗りしておりました。
本日はこの２本立てで。
